ロゴ画像:いずみ くらし

農地に恵まれた泉区で楽しむ、自分で育てて食べる「家庭菜園」のある暮らし

結婚を機に泉区に転入して3年半、私と夫は泉区への定住を決めました。決め手の一つは、農地が多く、家庭菜園を楽しめること。区内には市民農園が点在し、農家ではない市民も通年で花や野菜を栽培することができます。今回はちょっと気になる菜園生活を取材し、筆者の体験と共にご紹介します。

花・野菜・ハーブの画像

泉区では1年通して様々な花・野菜・ハーブなどを育てることができます

 

 

泉区は農体験の宝庫

 

泉区は経営耕地面積が横浜市内で最も多く、農業が盛んな地域です。戦後、全国的に都市化する中で、横浜市は全国に先駆け“都市農業”を確立。1970(昭和45)年から計画的に市街地化を行い、市街化区域と市街化調整区域(農地や森林を守るために開発を制限する区域)とを線引きし、これにより農地や樹林地が保全され、市街地に緑や農地が共存する現在の姿になりました。

 

市民農園制度は、1971(昭和46)年に横浜市が児童向けに開設した「こども農園」を皮切りにスタートしました。平成に入り、農家の高齢化や担い手不足などによる遊休農地の増加、農体験ニーズの高まりに応える形で、2003(平成15)年には土地所有者自身が農園を開設できる「特区農園」制度が開始されました。これを契機に、市内では民間開設の市民農園が増加していきました。また、子どもが農家の方と一緒に農作業の一部を体験できる「環境学習農園」もあり、貴重な農体験の場となっています。

 

泉区内の多様な農園の中から、今回は家庭菜園を楽しめる市民農園を3つご紹介します!

 

 

初心者も安心の設備、生育プロセスを楽しむ 上飯田町「いずみ野ファーム」

 

「いずみ野ファーム」看板の画像

宅地の中にある開けた空間が気持ちいい!

 

株式会社マイファームが展開する体験農園の1つ。自然に触れ、美味しい野菜づくりを楽しむ人を増やすことで、農家の減少などの社会課題に取り組んでいます。異業種でありながら農園経営をしている人や、農や食の世界に魅せられて専門的に学んだ人など個性豊かな農園アドバイザーが初心者からこだわり派までサポートしてくれます。

 

蛇口の画像

井戸水が蛇口から出るようになっており、仮設トイレも完備されています

 

対象:どなたでも

面積:1区画30㎡(21区画)

特徴:

・有機の野菜づくり(化学肥料・化学農薬は不使用)

・利用料金:「月額利用料6,050円」と「運営費11,000円」(年間契約)

・農具や肥料、固定種の種

・種苗や資材は利用者が選定・購入・保管する

 

この農園で野菜づくりに励む池田直子さんは近場で楽しめる自然を求めてコロナ禍に畑を借り、気分転換になったそうです。この農園を選んだ理由は「家から通える」「井戸水がある」「アドバイザーがいて土づくりから教えてくれる」など始めやすさにありました。

「自分で野菜をつくることで、食材を無駄にしないようにと考えるようになった」と池田さん

 

隣の市から通うT.A夫妻は自分で野菜を育てたい思いがあり、横浜でも緑豊かな泉区に魅力を感じ、30㎡と広い区画面積にも惹かれてこの農園を選びました。「植えた野菜が形になっていく過程が楽しい」とやりがいを感じていました。

T.A夫妻の画像

大きくなりすぎたキュウリも瑞々しいので、牛肉炒めや鶏ガラスープにして楽しんでいるというT.A夫妻

 

自宅プランター栽培歴30年のT.Oさんはすでにノウハウをお持ちですが、近年の野菜不足や価格高騰もあり、市民農園でも栽培することにしました。「育て方はネットですぐ調べられる」ので心配ないとのこと。「化学肥料を使用しないため、量が少なく時間がかかるが、成果がでると楽しい」と充実を感じています。

T.Oさんの画像

家族と収穫したり、子どもに分けたりできる喜びもあるとT.Oさん

 

 

育てるのは作物だけでなく、人が学び、人とつながる 中田町「生活クラブみんなの農園」

 

「生活クラブみんなの農園」看板の画像

中田中央公園近く、農業専用地区にあり、道具もすべてそろっています

 

こちらは都市近郊農業の発展・推進を目的として、生活クラブ神奈川とJA横浜の2つの協同組合が連携して泉区で取り組む農業体験農園です。農作業を通して生活クラブの組合員が農にふれ、農に学び、農への理解を深める場としています。農業体験を通じて農に親しみを持つ人を増やし、農地を守り、緑を守ろうという試みです。

 

ミニトマトの画像

猛暑の中でミニトマトが懸命に実る。井戸水を水やりに利用できます

 

対象:生活クラブ神奈川の組合員とその家族

面積:1区画20㎡(60区画)

特徴:

・プロの農家に教わりながら、原則無農薬・無化学肥料の野菜づくり

・利用料金:「入園料24,750円」…指導料、農具、種苗、収穫物など全て込み

・栽培品目は農園が季節に合わせ、つくりやすい品目を中心に選定

・都度講習会があり、指導してもらえる

・1区画を家族や組合員同士で共同管理も可能、交流の場にも

 

泉区在住のY.Yさんと加藤則康さんは、以前から畑をやってみたいと考え、生活クラブ組合員への加入をきっかけに農園生活を始めました。農家の指導が受けられるみんなの農園で教わりながら3年、今では後輩の質問に答えられるくらいの腕前になったそうです。Y.Yさんは「土を触るのは気持ちがいい、子どもの頃に戻ったような楽しさがある」と笑顔で教えてくれました。

Y.Yさんと加藤則康さんの画像

「土地だけあれば野菜はできるだろうと考えていたが、実際には難しかった」とY.Yさん

 

競(きそう)啓子さんは長年の組合員であり、生活クラブの理事でもあります。開園時にはどのような運営にするか話し合い、「気候の影響で作物が上手くできないこともある中、自分で体験して学ぶことで、食物や環境に対して当事者意識が持てる場にしたい」と考えました。何も持たずに参加できる気軽さがありながら、環境に配慮しなるべく土の力を活かした野菜づくりを学ぶことができます。

競啓子さんの画像

「レタスの根っこを初めて見た、芽かき(不要な芽を摘み取る作業)をすると良い物ができる」と発見の連続だった競さん

 

 

自由度が高く、各自が環境に優しい方法を試行錯誤 中田町「スローライフガーデン中田」

 

「スローライフガーデン中田」倉庫、一輪車の画像

ドラム缶に溜まる雨水や倉庫、一輪車を使用することができます

 

株式会社相鉄アーバンクリエイツが所有する農地を有効活用する目的で市民農園を開園。その後、専門スタッフによるサポート体制を拡充するため、株式会社マイファームと提携しました。マイファームが提供する、畑を貸したい人と借りたい人を結ぶサービス「ハタムスビ」経由で借りることのできる農園です。

 

横山真由美さんと春じゃがいもの画像

筆者の春じゃがいも。縦に長い区画を細かく畝で分け、少量多品目を栽培しています

 

対象:どなたでも

面積:1区画25㎡(49区画)

特徴:

・利用料金:「年額利用料27,500円」(1年更新)

・作業に必要な農具や資材、種苗は自分で選び、調達する

・栽培管理は自分で情報収集、試行錯誤する

・道具の管理も基本的に自分で行う(一部、共有の収納スペースを利用可)

・化学肥料・化学農薬は使わない

 

ご夫婦で楽しむ宇野恵さんは、家から近いことが決め手で菜園生活をスタート。「作物が少しずつ着実に変わっていく様が楽しい。毎年同じことをやっても違う結果になる」試行錯誤の日々といいます。ここで仲間と話したり、お裾分けし合ったり、よい刺激を受け真似することもあるそうです。

宇野夫妻の画像

野菜くずは機械で乾燥させて、米ぬかと一緒に畑に戻している宇野夫妻

 

ベテラン老人さん(仮名)は生まれ故郷でよく食べる金時草を育て、サラダやお浸しで楽しんでいます。黄色い大玉トマトが好きで、変わった品種を栽培できるのも家庭菜園ならではです。

金時草の画像

石川県では人気の金時草。連作にならないように年間計画を立てるベテラン老人さん

 

郷司賢さんはネット検索でこの農園を見つけました。2年間野菜づくりの講座を受講して学び、自分で作成したマニュアルが2冊も。「農家と同じ品質を目指したい」と目標を持って取り組んでいます。

郷司賢さんの画像

「ともかく景色がいい、同じ趣味の仲間がいるのがいい」と郷司さん

 

福島淳さんのこだわりは「安心して食べられる、食べさせられる」こと。秋にはお子さんやお孫さんとサツマイモ掘りを楽しんでいたのが印象的でした。景観のために花も育てています。

福島淳さんの画像

福島さんは定年退職後に区役所に相談、いくつかの農園を紹介してもらったそうです

 

浦越正純さんは生ごみの堆肥化に取り組み、15年間生ごみを出していないそうです。長い年月をかけて畑の生態系を調え、「野菜を食べてしまう草食の虫を肉食の虫が捕食する環境をつくれたと思う」と興味深いお話も伺いました。

浦越正純さんの画像

浦越さんは春大根を酢漬けにして保存、サツマイモは焼いて冷凍し1年分のストックをつくります

 

北原広司さんも「有機栽培にこだわりたい」と生ごみを堆肥化してごみを出さない暮らしをしています。「若い頃に仕事で海外へ行き、貧しい暮らしを多く見てきた。先進国の自分たちが与えてしまう影響も大きく、少しでも地球環境に優しい生活に努めたい」と話します。

北原広司さんの画像

資材などもなるべく自然のものでコストをかけず工夫している北原さん

 

 

家庭菜園のある暮らしを始めてみたい!

 

区内にはご紹介した農園以外にも多くの市民農園があり、必要な種苗や資材なども近くのお店でそろえることができます。家庭菜園を始めるポイントをまとめてみました。

 

いちごの画像

手軽に始められるプランター栽培や水耕栽培もオススメです

 

農園の探し方

  1. 農園にある立て看板の連絡先に問い合わせる
  2. 横浜市の市民農園マップで検索
  3. 地図アプリで「市民農園」と検索
  4. WEB上で「市民農園」と検索
  5. 口コミ(情報公開しない農園もある)

 

農園選びのポイント

  1. 通いやすさ
  2. トイレと駐車場の有無(併設・近隣の施設を借りられるか?)
  3. プロによる指導の有無
  4. 種苗・農具・資材・水の準備
  5. 区画面積
  6. 栽培農法やルールの確認

 

種苗や資材はどこで手に入れる?

おすすめは「100円ショップ」。家庭菜園用に程よい長さのマルチや防虫ネット、支柱などがあります。「ホームセンター」には初心者でも育てやすい品種の種苗が並び、堆肥や肥料もそろいます。「園芸店」には主力品種に加え面白い品種も見つかります。「農協」は玄人好みな品ぞろえです。

 

1年の栽培計画を考えよう

関東は比較的温暖な気候のため1年を通して野菜を栽培することができます。季節ごとの野菜づくりを楽しんでみてください。また同じ場所で同じ種類を育てない、連作障害が起きない工夫も必要です。

 

 

受け継がれてきた大切な農地を失わないために

 

季節ごとに採れる野菜たちの画像

季節ごとに採れる野菜たち、野菜の花もとても可愛い

 

筆者は8年家庭菜園をやってみて、上手くいかないこと、よく採れて嬉しかったこと、採れすぎて困ることもありました。でも旬の野菜はとても美味しく、家族や周囲も喜び、大きな幸せを感じます。どうやるのが自分の生活に合っているのか、続けていく中で見つけていくのだと感じています。

 

農地の管理はとても大変です。農家の高齢化と担い手不足のいま、土地の所有者だけで農地を守っていくことは難しいとも感じます。地域の皆さんが小さな面積を借りることで、楽しみながら、健康的に、農地や環境を保全する一助となれる。それも市民農園を利用する魅力の一つだと思います。

 

農家さんが代々守ってきた大切な農地を、美味しく楽しくみんなで守る。

泉区で「家庭菜園のある暮らし」を始めてみませんか?

 

 

##ライタークレジット:

写真・文=横山真由美

 

##Information:

■いずみ野ファーム

農園所在地:横浜市泉区上飯田町3843 (相鉄いずみ野線「いずみ野」駅徒歩20分)

管理運営:株式会社マイファーム

◎体験農園マイファームWEBサイトから無料見学会を予約

https://myfarmer.jp/farms/181/

 

■生活クラブ みんなの農園

農園所在地:横浜市泉区中田町2848 (市営地下鉄「立場」駅徒歩15分)

管理運営:生活クラブ生活協同組合

◎生活クラブWEBサイトから生活クラブに加入、組合員となり農園に応募

https://kanagawa.seikatsuclub.coop/service/farm_kanagawa/index.html

 

■スローライフガーデン中田

農園所在地:横浜市泉区中田町2862 (市営地下鉄「立場」駅徒歩15分)

管理運営:株式会社マイファーム

◎ハタムスビWEBサイトから会員登録後、サイト上から区画を申し込み

https://hatamusubi.com/land/131

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

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