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【泉区制40周年記念特別企画】泉区で活躍する熱い人①菱よしみさん(フリースペースい・ず・み)

今年2026年、泉区は区制40周年を迎えました。これを記念して特別企画「泉区で活躍する熱い人」をリレー形式で紹介します。第一回は25年以上にわたり子どもや若者を見守ってきた菱(ひし)よしみさんです。

 

 

親子に寄り添う「いつもそこにいてくれる大人」

 

明るくチャーミングな印象の菱よしみさん。誰かを思って話すと笑いあり、涙あり

 

筆者は子どもや若者と関わる仕事をしています。その中で「学校に行きづらい」「学校にいづらい」子どもたちに出会います。同じ数だけ悩む保護者もいます。なんだか苦しい、どうしたらいいかわからない、そんな親子を地域で見守り寄り添う大人がいます。

 

菱よしみさんは、学校がなんとなく苦手な子どもたち、学校へ行きたいけれど行けない子どもたちがゆったりと心を休めることができる居場所「フリースペース い・ず・み」の代表を務めます。同時に横浜市からの委任を受け、上飯田地区で「主任児童委員」や「こんにちは赤ちゃん訪問員」の活動を通して25年以上、子育て家庭の悩みに寄り添ってきました。

 

一筋縄ではいかない子育て、急速な環境変化の中での学校生活、親も子も戸惑い立ち止まってしまうこともあると思います。筆者はそんな悩める人が抱えた荷を少し降ろして心がほわっとほぐれる記事を書きたい、地域の温かさに触れてほしい、そんな思いで親子を見守る大先輩である菱さんにお話を伺いました。

 

「フリースペース い・ず・み」は毎月第2金曜日10時~13時、いずみ中央地域ケアプラザの多目的室で開催。別室で保護者の懇親会も同時開催しています

 

 

「はじめの一歩」を支える居場所、その歩み

 

菱さんが運営する「フリースペース い・ず・み」は、地域のつながりの中で他団体に「ここから始めてはどうか」とお子さんを紹介してもらうことが多いそうです(個別に問い合わせることもできます)。菱さんはこの居場所を「まずは家から一歩出てみよう」というきっかけづくりの場だと言います。子どもは小学生から高校生が中心で、多くても5名ほどの落ち着いた会です。

 

何もしなくてもOKだし、やりたいことをして過ごせます。いずみ中央地域ケアプラザの多目的室にはおもちゃもあるし、大人とボードゲームをしても楽しいし、自分の道具を持ってきて手芸をしてもよいのです。やりたいことを大人に相談してくれたら、道具を準備することもできます。ボランティアと子どもが自然と話せるカレーづくりをして、みんなで食べる「カレーランチ」も毎月やっています。

 

菱さんがこうした地域活動に参加したのは、ご自身が不登校の子どもを持つ親として相談したことがきっかけでした。当時は学校も不登校の子どもやその対応について明確な方針がなかったため、菱さんは学校に然るべき立場で子どもの状況や意見を伝えられる「主任児童委員」になりました。

 

2002(平成14)年、泉区の主導で幼稚園に登園を嫌がる子どもを心配する保護者の会が発足、主任児童委員や民生委員が参加しました。いざ活動してみると小・中学生の保護者からのニーズが多く、それならばと翌2003(平成15)年、子どもも保護者も来て別室で過ごせる「フリースペース い・ず・み」が誕生しました。

 

 

原因なんてない! 子どもの声をとにかく待つ

 

社会福祉協議会 泉ふれあいホームでも「親の会」を開催。毎月第4水曜日10時~12時

 

菱さんがこの活動に情熱を注ぐ原動力は、子どもや保護者から直接聴く声にあります。「保護者は学校に行かない、行けないという子どもの表面を見てしんどくなる。でも、学校に行けなくて一番つらいのは本人」と菱さん。「子どもはベッドに入り込んでモゾモゾして、人が動く時間には外へ出られない、からだが動かない、心が押しつぶされている状態」。疲れ果てていて、死のうと思った子もいたと言います。

 

そこまで子どもを追い込んだものは何か、という筆者の問いに菱さんは「つい原因を探してしまうけれど、探してもこれという原因はないんです。同学年の子と合わないことも多いが、いろんなことが積み重なって彼らは疲弊しきっています。親思いの子どもも多く、親が悩んでいることに子どもも悩んでいるんです」と慮(おもんぱか)ります。

 

子どもにその複雑な感情を言葉で説明してもらうのはとても難しいことです。子どもが気持ちを話してくれるコツはあるのでしょうか。菱さんはキッパリ断言します。「とにかく待つこと。現代は誰もが時間に追われ、何かにせっつかれています。学校に行けなくなったときは、もう何かをする力がない状態。なんで? と原因を探したがるけれど、なんでなんてわからない。わかっていれば自分でなおしていくさ!」と子どもの気持ちを代弁してくれました。

 

 

コロナ禍をきっかけに、変化した子どもの環境

 

ボランティアさんがつくったサクサクのクッキーと紅茶をいただきながら近況報告

 

子どもたちの環境について、菱さんが肌で感じた転機はコロナ禍でした。「コロナ禍以前は学校に行くべきという雰囲気でした。でも在宅学習や時間差学習を経験した子どもたちは、全員で学校に行くことに疑問を覚えています」。保護者の働き方も変わり、子どもを取り巻く環境は、昔の常識とは違う雰囲気に少しずつ変化しています。

 

「最近では学校でも不登校対応をしてくれるようになり、保護者が相談すると休むことを提案してくれる場面も増えました」と菱さん。在宅で学校の勉強をしている子どもも増え、社会のツールも多様化し、自分で自分に合う場所や方法を選択できるようになりました。菱さんもこうした子どもたちの在り方を理解してくれる人が増えてきた、と感じています。

 

 

キーワードは仲間。人は人との関わりの中で成長する

 

菱さんが企画した社会見学のしおり。なんでもやってみるのがモットー

 

菱さんは活動の中で、地域やフリースペースで出会う子どもたちの状況を学校に伝えています。

 

菱さんは、和泉町にある神奈川県立横浜修悠館高等学校にも2007年の立ち上げから関わり、学校評議員として4~5年活動してきました。公立通信制高等学校で、単位履修制とスクーリングを組み合わせた学校です。

 

以前、「フリースペース い・ず・み」の卒業生がこちらの高校に進学し、なかなか友人ができないという困りごとに直面したことがあります。学校の特性上、生徒間のつながりを持ちにくかったのです。しかし「ここ5~6年で生徒たちが自主的に行動できるようになってきました」と、菱さんの目は輝きます。その理由は「仲間ができたから」でした。

 

その背景には、学校側の柔軟な対応があります。通信教育の特性を活かしながらも生徒の多様なニーズに応えるべく、平日に登校して仲間と学習支援を受けたり、自宅学習で1人じっくり学んだり、自分に合う形で学習できる仕組みが整えられてきました。また、学内や地域での生徒活動も推進され、生徒同士の交流や挑戦の場も多く設けられました。

 

「子どもも成長するんだけど、学校も成長するんだ!」。それは菱さんにとっても大きな発見でした。

 

「人との関係は苦手でも、やっぱり人間だもの! 人との関わりを欲していて、仲間とつながり、会話をしたいんだよね」と菱さんは笑います。そのいたずらっぽい笑顔に、子どもに寄り添い続けた菱さんの持つ、すべてを包み込む温かさを感じました。

 

 

やってみたい! の言葉に背中を押してくれた仲間たち

 

地域活動を行う上での心構えを尋ねると、菱さんは「自分は色んな人に生かされている」と言います。地域の年配者から「声がかかるうちが花、できるうちはやりなさい」と鼓舞されたこともありました。フリースペースの前代表は、菱さんが活動で「こんなことできないかな」と相談すると、いつも背中を押してくれ、仲間たちも率先して手伝ってくれました。また、活動を応援してくれる家族は菱さんにとって大きな存在であり、感謝していました。

 

活動は大変なこともありますが、「子どもたちのおかげで、子どもと保護者の気持ちがわかるようになるし、時代・社会・学校・先生のことも知ることができました」。菱さんにとって、生きた学びは楽しみでもあります。活動していれば当然、悩ましいことも起こります。でも菱さんは悩みをなくそうとしません。「悩みがない人なんていない! 悩んだら悩んだだけ、いい女になれると思うことにしています!」その気持ちの良い考え方に、私も気分爽快でした。

 

何をやってもストレスはあるもの、菱さんが実践する「ストレス三分割」

 

 

区制40周年を迎えて、地域の方へメッセージ

 

まずは自分自身へ、と前置きした菱さんは「子どもを相手にして、この人なら話していいなと思える大人でいたいと思います」とニッコリ。地域の方へは「子どもたちが信頼できる大人を見つけて、抱えた思いを小出しにできる、そういう地域に育ってほしいです」。菱さんからの温かいエールです。では、子どもたちへは?

 

「子どもたちは、地域を信頼して思う存分がんばってほしい! それだけ!」

 

その力強い言葉に私は勇気をもらいました。なかなか他人の子どもに無責任なことは言えません。子どもたちを信じて寄り添い続けてきたからこそ、子どもや保護者の背中を押せるのだと思います。私も悩むことを恐れず、菱さんのようないい女を目指そうと思います!

 

 

写真・文

=横山真由美

 

 

いっずんから次の人を紹介

 

次回の「泉区で活躍する熱い人」は美術教師・芸術家として活躍する「松本敏裕」さんだずん。記事を掲載したら随時お知らせするずん!

 

フリースペース い・ず・み

日時:毎月第2金曜日10時~13時

会場:いずみ中央地域ケアプラザ(横浜市泉区和泉中央北5-14-1)多目的室

相鉄線「いずみ中央」駅徒歩5分

別室で保護者の懇親会も同時開催

 

親の会

日時:毎月第4水曜日10時~12時

会場:社会福祉協議会 泉ふれあいホーム(横浜市泉区和泉中央南5丁目4番13号 いずみ中央相鉄ライフM3階)

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