こーひーえん
相鉄いずみ野線・弥生台駅から徒歩5分ほど。道沿いに静かにたたずむのが、創業38年の喫茶店「珈琲園」です。木の温もりが感じられる落ち着いた店内で、カウンター席にはロッキングチェアが並んでいます。ここでコーヒーの抽出から調理までをひとりで手がけるのが、2代目店主の瀬川和駿(せがわかずとし)さん。気取らない喫茶店でありながら、毎朝仕入れる野菜を取り入れた日替わりのランチや、地元産の果物を使った自家製フルーツドリンクなど、手作りのメニューにはそのこだわりが光ります。地産地消の取組を始めたきっかけや、お店のこだわり、そして泉区の魅力について、瀬川さんにお話を伺いました。
珈琲園は、元々喫茶店めぐりが好きだったという先代が1983年にオープン。相鉄いずみ野線が開業してから7年ほどで、街が形成されはじめた頃だったとのこと。現在は先代から引き継いだ瀬川さんがお母様やスタッフと店を切り盛りしています。
お店のこだわりは、一杯ずつ抽出するコーヒーはもちろん、すべて手作りのランチメニューやスイーツ。季節にあわせて、地元産の野菜や果物を使っています。
瀬川さんは幼少期から弥生台で育ち、森で木いちごを採ったり、秘密基地を作ったりと、自然に触れ合ってきたそうです。大学生のときには、里山保全や農体験などを行うNPO法人「よこはま里山研究所」にも参加。また、駅の裏手にある畑や森を整備するボランティア活動を手伝うことで地元のコミュニティと関係を築き、今では採れた野菜を分けてもらうこともあるのだとか。
こうした自然への親しみから、「一気に始めるというよりは、だんだんと地産地消の取組が増えていきました」と語る瀬川さん。先代の頃は店も忙しく、業務用の材料などを使っていましたが、代替わりの過程で徐々に手作りのメニューを増やし、そこに地元の農産物を取り入れていったそうです。
また2015年には、地産地消の案内人「はまふぅどコンシェルジュ」にも認定されました。現在はコロナ禍でイベントの開催などは難しいですが、数年前には近隣の梅農家で収穫体験を企画し、梅ジュースの作り方をレクチャーする催しも行ったそうです。
「近くの農家さんと連携し、子育て世代に喜んでもらえるようなイベントをしたい」と瀬川さん
コーヒーは創業当時からダッチ式、サイフォン式、ドリップ式を使い分け。写真右手、背の高いガラス器具一式が、水出し用の「ダッチコーヒーメーカー」
お店の外観
珈琲園自慢の地産地消メニューは、地元産の小ゆず、甘夏、梅、赤しそなどで作る自家製のフルーツドリンクやジャム。時期にあわせて毎年漬け込み、ジュースやスカッシュとして提供するほか、ジャムはスコーンやシフォンケーキなどのスイーツとあわせて楽しむことができます。日替わりのランチメニューでは、サラダやメインディッシュに旬の野菜を取り入れています。
仕入れについて、「レストランのように、特定の農家さんから大量に仕入れているというわけではないんです。より一般のご家庭に近いかたちで地元の農産物を取り入れています」と瀬川さん。野菜は、主に道路を挟んで向かい側の「神原酒店」や、少し足を伸ばして中田にあるJA横浜の「ハマっ子直売所」などで日々購入するそうです。近所の農家さんでたくさん収穫があったときには安く分けてもらうことも。また、フロートやパフェのアイスクリームは、瀬谷区の「オーガスタミルクファーム」のものを使っています。
瀬川さんのこだわりは、地元産の素材の美味しさを引き出すことにあります。油や調味料は必要最低限にすることで、パスタやカレーでも重すぎず、食べ進めるごとに野菜の甘みを感じることができます。
「旬のものを取り入れるのは、気をつかう部分もありますが、自然な美味しさを活かすことができるのがポイントです。気取らず、でもしっかりやっていくことで、お客さんにとってもほっとする味になると思います。丁寧に調理するため時間がかかりますが、待っていただく代わりに、手をかけたものをお出ししています」。待つ時間も含めて、ゆったりと過ごせるのがお店の魅力になっています。
自家製フルーツドリンク。左から「ゆずセパレートティー」(680円)、「赤しそジュース」(580円)、「甘夏スカッシュフロート」(730円)※価格はすべて税込
注文を受けてから焼き上げるスコーンは、外はサクッ、中はホロッとした食感。選べる自家製のジャム2種とクロテッドクリーム付き(600円・税込)
シンプルで素朴な味わいのシフォンケーキ。自家製ジャムと「オーガスタミルクファーム」のアイスクリームを添えて(600円・税込)
そんな瀬川さんが語る泉区の魅力は、都会の便利さと適度な自然の共存。衣食住が揃い横浜の中心地にもほど近い一方で、ホタルが生息する水辺や、タラの芽やフキノトウといった山菜が顔を出す場所もあり、身近な自然が残っています。畑越しに富士山が見える光景は、ここが横浜市内だということを忘れさせるほど。まさに郊外の良さを感じられる地域です。
「いつもと違う道で帰ってみたら見慣れない花に出会ったり、春ならツクシ、秋ならススキで季節の移ろいを感じられたりと、ちょっとした気づきで景色が変わるエリアです。子育てにも向いていると思います」。
しかし、少しずつ畑が太陽光パネルの設置場所や駐車場に変わっていることもあると瀬川さんは言います。「森や畑は一度なくなるとすぐには元に戻りません。昔から泉区に住んでいても、地元の農畜産物に馴染みのない方も多いはずです。まずはお店で野菜や果物の美味しさを伝えることで、実際に購入してもらうきっかけになれば」。
毎日ひとりで料理やスイーツ作りを手がける瀬川さん。これからはお米や卵を地元産のものにするなど、無理のない範囲で少しずつ地産地消の取組を広げていくつもりだそうです。
毎年12月に仕込むというフルーツドリンク。丁寧に下処理した果物と砂糖だけでできています
ゆずや甘夏の皮もたっぷり入り、マーマレードのような凝縮された美味しさを楽しめます
先代の頃からほとんど変わっていないという内装。いまも昔も変わらずゆっくりと時間が流れます
【珈琲園】 住所:泉区弥生台26-5 アクセス:相鉄いずみ野線弥生台駅から徒歩5分 営業時間:10:00〜19:00 定休日:火曜日 電話番号:045-812-3131 HP:https://smy.bz/coffeeen/
身近な喫茶店だからこそ、ほっとできる味を。素材の美味しさを引き出す手作りメニューが魅力の「珈琲園」
相鉄いずみ野線・弥生台駅から徒歩5分ほど。道沿いに静かにたたずむのが、創業38年の喫茶店「珈琲園」です。木の温もりが感じられる落ち着いた店内で、カウンター席にはロッキングチェアが並んでいます。ここでコーヒーの抽出から調理までをひとりで手がけるのが、2代目店主の瀬川和駿(せがわかずとし)さん。気取らない喫茶店でありながら、毎朝仕入れる野菜を取り入れた日替わりのランチや、地元産の果物を使った自家製フルーツドリンクなど、手作りのメニューにはそのこだわりが光ります。地産地消の取組を始めたきっかけや、お店のこだわり、そして泉区の魅力について、瀬川さんにお話を伺いました。
身近な自然の魅力を伝えるために
珈琲園は、元々喫茶店めぐりが好きだったという先代が1983年にオープン。相鉄いずみ野線が開業してから7年ほどで、街が形成されはじめた頃だったとのこと。現在は先代から引き継いだ瀬川さんがお母様やスタッフと店を切り盛りしています。
お店のこだわりは、一杯ずつ抽出するコーヒーはもちろん、すべて手作りのランチメニューやスイーツ。季節にあわせて、地元産の野菜や果物を使っています。
瀬川さんは幼少期から弥生台で育ち、森で木いちごを採ったり、秘密基地を作ったりと、自然に触れ合ってきたそうです。大学生のときには、里山保全や農体験などを行うNPO法人「よこはま里山研究所」にも参加。また、駅の裏手にある畑や森を整備するボランティア活動を手伝うことで地元のコミュニティと関係を築き、今では採れた野菜を分けてもらうこともあるのだとか。
こうした自然への親しみから、「一気に始めるというよりは、だんだんと地産地消の取組が増えていきました」と語る瀬川さん。先代の頃は店も忙しく、業務用の材料などを使っていましたが、代替わりの過程で徐々に手作りのメニューを増やし、そこに地元の農産物を取り入れていったそうです。
また2015年には、地産地消の案内人「はまふぅどコンシェルジュ」にも認定されました。現在はコロナ禍でイベントの開催などは難しいですが、数年前には近隣の梅農家で収穫体験を企画し、梅ジュースの作り方をレクチャーする催しも行ったそうです。
「近くの農家さんと連携し、子育て世代に喜んでもらえるようなイベントをしたい」と瀬川さん
コーヒーは創業当時からダッチ式、サイフォン式、ドリップ式を使い分け。写真右手、背の高いガラス器具一式が、水出し用の「ダッチコーヒーメーカー」
お店の外観
丁寧なメニューでゆったりとした時間を
珈琲園自慢の地産地消メニューは、地元産の小ゆず、甘夏、梅、赤しそなどで作る自家製のフルーツドリンクやジャム。時期にあわせて毎年漬け込み、ジュースやスカッシュとして提供するほか、ジャムはスコーンやシフォンケーキなどのスイーツとあわせて楽しむことができます。日替わりのランチメニューでは、サラダやメインディッシュに旬の野菜を取り入れています。
仕入れについて、「レストランのように、特定の農家さんから大量に仕入れているというわけではないんです。より一般のご家庭に近いかたちで地元の農産物を取り入れています」と瀬川さん。野菜は、主に道路を挟んで向かい側の「神原酒店」や、少し足を伸ばして中田にあるJA横浜の「ハマっ子直売所」などで日々購入するそうです。近所の農家さんでたくさん収穫があったときには安く分けてもらうことも。また、フロートやパフェのアイスクリームは、瀬谷区の「オーガスタミルクファーム」のものを使っています。
瀬川さんのこだわりは、地元産の素材の美味しさを引き出すことにあります。油や調味料は必要最低限にすることで、パスタやカレーでも重すぎず、食べ進めるごとに野菜の甘みを感じることができます。
「旬のものを取り入れるのは、気をつかう部分もありますが、自然な美味しさを活かすことができるのがポイントです。気取らず、でもしっかりやっていくことで、お客さんにとってもほっとする味になると思います。丁寧に調理するため時間がかかりますが、待っていただく代わりに、手をかけたものをお出ししています」。待つ時間も含めて、ゆったりと過ごせるのがお店の魅力になっています。
自家製フルーツドリンク。左から「ゆずセパレートティー」(680円)、「赤しそジュース」(580円)、「甘夏スカッシュフロート」(730円)※価格はすべて税込
注文を受けてから焼き上げるスコーンは、外はサクッ、中はホロッとした食感。選べる自家製のジャム2種とクロテッドクリーム付き(600円・税込)
シンプルで素朴な味わいのシフォンケーキ。自家製ジャムと「オーガスタミルクファーム」のアイスクリームを添えて(600円・税込)
たくさんの発見がある町、泉区
そんな瀬川さんが語る泉区の魅力は、都会の便利さと適度な自然の共存。衣食住が揃い横浜の中心地にもほど近い一方で、ホタルが生息する水辺や、タラの芽やフキノトウといった山菜が顔を出す場所もあり、身近な自然が残っています。畑越しに富士山が見える光景は、ここが横浜市内だということを忘れさせるほど。まさに郊外の良さを感じられる地域です。
「いつもと違う道で帰ってみたら見慣れない花に出会ったり、春ならツクシ、秋ならススキで季節の移ろいを感じられたりと、ちょっとした気づきで景色が変わるエリアです。子育てにも向いていると思います」。
しかし、少しずつ畑が太陽光パネルの設置場所や駐車場に変わっていることもあると瀬川さんは言います。「森や畑は一度なくなるとすぐには元に戻りません。昔から泉区に住んでいても、地元の農畜産物に馴染みのない方も多いはずです。まずはお店で野菜や果物の美味しさを伝えることで、実際に購入してもらうきっかけになれば」。
毎日ひとりで料理やスイーツ作りを手がける瀬川さん。これからはお米や卵を地元産のものにするなど、無理のない範囲で少しずつ地産地消の取組を広げていくつもりだそうです。
毎年12月に仕込むというフルーツドリンク。丁寧に下処理した果物と砂糖だけでできています
ゆずや甘夏の皮もたっぷり入り、マーマレードのような凝縮された美味しさを楽しめます
先代の頃からほとんど変わっていないという内装。いまも昔も変わらずゆっくりと時間が流れます
【珈琲園】
住所:泉区弥生台26-5
アクセス:相鉄いずみ野線弥生台駅から徒歩5分
営業時間:10:00〜19:00
定休日:火曜日
電話番号:045-812-3131
HP:https://smy.bz/coffeeen/