ロゴ画像:いずみ くらし

Il Cervo(イル チェルボ)

いるちぇるぼ

営業時間
午後6時~午後9時まで
休業日
水曜日
住所
横浜市泉区中田東2-1-5
TEL
045-435-9646
HP
https://ilcervo.owst.jp/
推薦者
平本 博
  • 写真:Il Cervo(イル チェルボ) 1
  • 写真:Il Cervo(イル チェルボ) 2
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食べて終わりにしはしたくない。中田の野菜から生まれるつながり

横浜市営地下鉄ブルーライン・中田駅1番出口を出てすぐ右手に、イタリアンレストラン「il Cervo(イル・チェルボ)」があります。店主の三鹿博行さんは中田野菜にこだわり、季節の変化を楽しみながら厨房に立ちます。「cervo」はイタリア語で「鹿」の意味。自分だけの店を切り盛りする楽しさを話してくれました。

 

横浜に住んで、働いて、食事をするなら横浜のものを

イタリアの国旗と小さなオリーブの木でザ・イタリアンの佇まい

「il Cervo(イル・チェルボ)」は2017年に開店。店主の三鹿さんは22歳のときからイタリアン料理の修行を積んできました。三鹿さんの学生時代は「イタ飯ブーム」の只中。学費を稼ぐための居酒屋アルバイトから、徐々に飲食業界に「ハマってしまった」と言います。

 

「もともとはプロダクトデザインを学んでいたのに、進路を変えて飲食の方に飛び込みました。包丁の握り方だって知らないし、キャベツとレタスの区別もつかないようなズブの素人。そういう人間を拾ってくれたお店がイタリアンレストランだった」

 

実務で料理の修行をしながら、調理師免許を修得。仕事仲間の繋がりもあり、銀座や十日市場、日本大通りなど、さまざまなお店を渡り歩きました。とくに、約10年間勤めた十日市場のレストランでは現在のil Cervo(イル・チェルボ)にまで続く仕事のベースを身につけたと言います。

 

「食材を生かす。1から10まで自分でしっかり手づくりする。前菜からデザートまで全てのつくり方、扱い方を学びました。人の味覚に合わせてうまいものはつくれないから、『自分の料理』『自分の色』を出せるようにと考えていました」

「もともとは鎌倉野菜を使うお店にしたかった」と話す三鹿さん。ですが、il Cervo(イル・チェルボ)に来店したお客さまのおすすめで横浜野菜に興味をもつようになったと言います。

 

「中田の野菜を使うようになったら、葉っぱ1枚とっても味があっておいしい。瑞々しさと食感が違います。だったらこれを使うしかないと思って」

一番人気があるという「チェルボのバーニャカウダー」(1,500円・税込)。野菜の彩り、味わい、香り、食感をじっくり楽しみたい一品

 

実際に中田の野菜を使った料理を食べて「おいしい」「これはどこの野菜?」と言うお客さまもいます。三鹿さんは「地元、中田の野菜ですよ」と答え、お客さまとのコミュニケーションの糸口にしています。

 

「せっかく横浜に来て、住んで、働いて、食事をするならそこのものを食べる方がおいしい。今はスーパーで同じ野菜が365日を通して買えるけれど、その時、その場でしかとれないものを使いたいですね。そうすれば季節を感じられるじゃないですか」

 

三鹿さんは「野菜ありき」でメニューを構成すると言います。そのため、葉物野菜が育たない夏にはサラダを出さないほど。葉が薄く、味が劣る旬ではない葉物野菜を使うくらいなら、「無理に『メニューありき』で考えて、お客さまにお出ししなくていいのでは」とすら言います。

 

 

よく注文される「チェルボのバーニャカウダー」も、常に決まった野菜を使うことはありません。1〜2週間後には以前の野菜がなくなっている。そんな季節の移り変わりを、三鹿さん自身が楽しみながらメニューや料理を構成すると言います。

 

横浜野菜をお客さまに勧められて、そのおいしさに衝撃を受けたのは森農園の野菜でした。それ以降は、1つの農園に仕入れ先を特定することはせず、複数の農園やJA横浜の直売所をめぐり、「おいしいと思えるもの」を探し求めています。

 

三鹿さんの言葉の節々から、自分の専門領域への深いこだわりと、生産者への信頼がにじみます。

 

「『生産者に会いに、畑へ行くことがあるのか』とよく聞かれますが、僕自身はそういうことをしていません。タレントが畑に訪れて農産物にかぶりつき、『うまい!』って言うようなテレビ番組ってありますよね。それを見て、できたてのものがおいしいのは当たり前だと思うんです。生産は生産のプロであるその人にお任せし、こちらは出てきたいいものを最大限に使わせてもらう。それがレストランの仕事だと僕は思っています」

バーニャカウダーを盛り付ける様子。ときおり手が止まったり、皿を回したり、美しい盛り付けを探っているようでした

「1回来て、ただ食べてさようなら」にしたくない

il Cervo(イル・チェルボ)に訪れるのは主に地元の人たちです。高齢の夫婦や最近引っ越してきたばかりで、おいしいお店を探している人がふらりと訪れると言います。

 

「繁華街にあるお店ではないので、地元にずっと住んでいるような人が来てくれます。そういう人たちがこのお店のメインのお客さまです。一見で来て、それで終わりという感じにはしたくないですね」

 

三鹿さん曰く、中田の人たちは「いい意味で田舎っぽい」。付き合いがよく、自分から踏み込めば継続的につながりをもてる人たちだと話します。

 

お客さまによく尋ねる質問は「どこに住んでいるのですか」。徒歩で来られる範囲なら料理に合うお酒を勧め、野菜に興味をもってもらえたら、どこのものがいいと話す。三鹿さんがひとりで切り盛りする店だからこそ、お客さま一人ひとりへの目配せを欠かしません。

「初めて来る人で、うちのメニューを見て『種類が少ないね』と言う人もいます。でも、ひとりでやっているお店だから手を広げすぎても良いものが出せない。だったら、自分が本当に食べてほしいものだけを出します。であればこそ、良いものを出さないといけないなって自覚しますよね」

4人がけテーブル席が2つと、2人がけのカウンターの店内。店内は三鹿さんがお客さまの要望に合わせて改装した

 

三鹿さんが目指すのはコース専門のお店。食事の流れや組み合わせを楽しみ、お客さま一人ひとりの自分の舌をつくってほしいと話します。

 

「高級料理店でコースを食べたら、緊張して味が分からないことってあるじゃないですか。ここでは肩肘張らずに、お客さまご自身の味の基準をつくっていただけたらと思います。そして、その時々の季節の、旬のものの良さも伝えていきたいです。『お客さまは神様』ではなく、対等な関係でやっていきたいかな」

 

提供して、食べてもらって終わりではなく、食を通じた対話を試みる三鹿さん。中田野菜がつくったつながりは、これからも続いていく。

野菜だけでなく、卵や豚肉も市内産のもの。手前は「豚バラ肉の柔らかバルサミコ煮込み」(2,400円・税込)。奥のパスタは冬だけに提供される「自家製ボロネーゼ」(1,500円・税込)。

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