クラシック音楽をもっと身近に ピアニスト・丹生谷佳惠さんが模索する泉区の音楽活動
丹生谷佳惠(にゅうのや・かえ)さんは横浜市泉区在住でクラシック音楽を普及するために活躍しているピアニストです。ライターはクラシックに疎いのですが、中田で手軽に楽しめるコンサートが頻繁に開催されていることを知り、度々足を運びました。しかし、中には存続の危機にあるものも。丹生谷さんの活動と、丹生谷さんが参加された泉区文化祭「輝きコンサート」などを紹介します。
青空の下で多世代が交流する樹林コンサート
10月28日、泉区中田ふれあい樹林で開催された「樹林コンサート」に行ってきました。丹生谷佳惠さんはピアノを、お友達は篳篥(ひちりき)を演奏。良い天気で木漏れ日を浴びながら、突然咲いたのか、季節外れの満開の桜を見ながら音楽を楽しみました。
行く途中、男性らにエスコートされたご高齢の集団と一緒になりました。開催場所の前の道は狭く歩道もなく、すれ違いが厳しいので誘導も大変です。「車がくるぞ」の声が2度ほどあり、健脚でない小生も退避が早くでき、助けられました。
高齢者をエスコートした男性にお話を聞いてみました。近くのデイサービスからの参加者で、13人で一緒に来たそうです。「地域社会と交流するのは大切なので来ている」とのこと。まさにそうですよね。皆さんも音楽を楽しく聞き入っていました。
そしてこの日はハロウィンに近いこともあり、「お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ」と言いそうな子どもたちにはお菓子も配られ、喜んでいました。そう、このコンサートは、高齢者と子どもたちとの交流の場所にもなっていました。
樹林コンサートは以前より中川地区センターで開催していたものがコロナ禍で中止になってしまったので、2022年に三密にならないよう、青空の下で始まりました。2023年は6回実施され、これからも継続できれば嬉しいと丹生谷さんは話していました。
泉区を中心に精力的に活動する丹生谷さん
丹生谷さんは国立音楽大学ピアノ専攻卒業。1996年より度々渡仏し、トルコのピアニスト、フセイン・セルメット氏の下で研鑽を積みました。ローゼンストック国際ピアノコンクール審査員特別賞、霧島国際音楽祭特別奨励賞などを受賞し、チェコ・フィルハーモニー八重奏団、同じくチェコのヤナーチェク四重奏団と共演するなど活発な演奏活動を続けています。日本とチェコでCDを4枚発売し、日本ではレコード芸術推薦盤に選出されました。泉区内で、1992年からピアノ教室も主宰されています。
2023年11月〜12月の泉区内だけでも、泉区公民館での泉区文化祭「輝きコンサート」(11月3日)、多世代交流スペース「宮ノ前テラス」での「~大人も子どもも楽しめるコンサート~トリオで名曲を」(11月26日)、同「~大人も子どもも楽しめるコンサート~ピアノ連弾で名曲を」(12月24日)、グループホーム「ちゃんと」の「職場でジョイントコンサート」(12月29日)と多数のコンサートに出演され、ライターも聴かせていただきました。
11月3日・文化の日に泉公会堂で行われた「輝きコンサート」では、最後のトリを任されました。途中、マイクでクラシック音楽について話す場面もありました。「クラシックは敷居が高いので、その下駄をはずして会話をしながら、もっと身近になってほしい」との思いで、丹生谷さんは音楽活動を続けているそうです。
輝きコンサートは、区内で活動する音楽サークルが集まり、さまざまな楽器演奏を披露する催しです。多くがベテラングループの演奏でしたが、初めて参加するグループもありました。3人グループの「すずらん」です。メンバーは、遼子規(りょうしき)キンジロウさん、近藤壮さん、中山さおりさんです。すずらんのメンバーに共通するのは、「泉区大好き」という気持ちです。中には、泉区陸上選手権大会砲丸投げで優勝したり、横浜いずみ歌舞伎保存会で白波5人男を演じたり、中田囃子保存会では太鼓・お囃子フェスティバルや中田小学校で開催された「ふれあいコンサート」など、区内各地のイベントに精力的に参加しているメンバーもいます。2024年1月14日泉公会堂で市民合唱団による「第九フェスティバル」に参加し、元旦に起こった震災に遭われた方々を思い、「花が咲く」をみんなで熱唱しました。「輝きコンサート」では、遼子規さんが作詞し、近藤さんが編曲したオリジナル曲を4曲演奏しました。
存続が危ぶまれる輝きコンサートと、新たな活動の芽吹き
丹生谷さんは、「輝きコンサート」の主要メンバーの一人です。今回のコンサート後の反省会の前にお話をお聞きしました。同コンサートは30年前から続いていて、丹生谷さんは学生時代から演奏をしており、思い出のあるコンサートとのこと。それが、金銭面で存続の危機にありますが、なんとか続ける道を模索したいとのことでした。
反省会では担当を新たに決め、丹生谷さんは広報を担うことになりました。しかしそれぞれが所属部門に持ち帰って相談したところ、これ以上の負担は耐えられない、高齢でもう難しいとの意見も多くあり、10あったグループのうち、半数の5グループが実質撤退の方向になってしまったようです。
しかし、新しい道の芽生えがあります。丹生谷さんが輝きコンサートで初めて会った「すずらん」のメンバーと意気投合して、メンバーの職場の介護施設でのジョイントコンサートも実施されました。
丹生谷さんの思いが継続できるように、身近に器楽に触れられる機会を絶やさず、泉区の文化振興やまちおこしにぜひつなげたいと思います。輝きコンサートには、寄付や人材など、区民の支援を期待したいものです。
##ライタークレジット:
写真・文=藤田 耕作
Information:
ピアニスト丹生谷佳惠のホームページ『⭐️かえの部屋⭐️』
※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。
一覧をみるIl Cervo(イル チェルボ)