ロゴ画像:いずみ くらし

ジャム作りが出会いの輪を広げる 中田下村町のジャム作り名人・中野寛さん

農家や家庭菜園が多く、果物が手に入りやすい泉区。近所で採れるブルーベリーを使って毎年大量のジャムを作っている90代の男性がいると噂を聞いて、どんな方だろうと関心を持ちました。ジャム作り名人・中野さんのお宅を訪ねお話を伺ってみると、柔軟で芯の通った素敵な方でした。

ジャム作り名人・中野寛さん

 

泉区の土地柄が
ジャム作りを応援!

 

中田下村町内会最年長の中野寛さんは、当年94歳(2022年10月で95歳)。ジャム作りの名人です。季節に合わせて大量のジャムを作り、御近所や知人、友人に贈っています。高齢になるほどに人とのつながりが少なくなるといわれる中、中野さんの場合、どんどんその輪が広がっています。「『味をみて!』と半ば押しつけでジャムを差し上げているので、年代の違う若い世代の方々との輪も広がっています」とほほ笑む中野さん。ジャム作りは自身の喜びであり、そして周りに配布し喜んでもらえることがまた嬉しいと、何と30年以上も続けているそうです。

 

大鍋で煮たブルーベリージャム

 

中野さんのジャム作りは、果実の実りに合わせ3月は甘夏、4月はイチゴ、6月はビワ、8月はブルーベリーと年間スケジュールが決まっています。

 

泉区は農家が多く、又、自宅の庭や畑地を借りて菜園を楽しんでいる方もたくさんいて、果物等が手に入りやすい土地柄です。ブルーベリーは30年以上懇意にしている近所の方の果実畑から毎年大量に購入しているそうです。

 

 

中野さんの厨房を覗いてみよう

 

普段料理に使うコンロとは別に、高さの低いコンロがもう一台。これはジャム作り用の大鍋を、安全便利に使うため。最も大きな鍋が直径44cmで、30kgもの果実を煮込むのだから、気力も体力も半端ではありません。コンロの脇には、すぐ使用する砂糖の入った袋がぎっしり詰まった引き出し、出来上がったジャムを入れるタッパーの引き出し、各種調味料の棚。下段は冷凍庫三台。その扉には中に入ったジャム名の書かれたシールが貼られています。

 

冷凍庫が三台あり、上の棚には鍋がたくさん

 

驚くのは上段に並べられた鍋の数の多さです。ジャム作り以外の日常の料理をも、しっかりやっていることがうかがえます。効率よく、楽しんで出来るような仕掛けがいっぱい。中野さんの厨房に入っただけで、何とも楽しくなってきます。

 

 

家事をすることは負担ではなく
楽しみ…そのルーツは?

 

中野さんはジャム作りを定年退職後に始め、以来30年以上。しかしジャム作りを含めた家事の楽しさを知った時期は、幼い頃までさかのぼることになります。

 

九州の山中で育った中野さんは、どこに行くにも長く歩いていかねばならず、それが今日の健康につながっています。八人家族の食事づくりはことに大変で、幼い中野さんがお母さまを手伝うようになったそうです。寿司をつくる時にはふぞろいの端をもらえ、天ぷらは味見をさせてもらえました。お母さまを手伝うのは中野さんだけでしたが、家事の手伝いは負担ではなく、楽しい思い出の一つでした。

 

上京して働くようになり、仲間は酒飲みに誘い合わせる中、断って友人の料理の手伝いに行くなどして、いつの間にか調理師免許を取得した中野さん。といってもプロとして調理の仕事をしたことは全くないのだそう。何でも興味津々、静かに突き進んだ結果だったようです。

 

 

家事は手の空いた方がやる
家庭での役割も夫婦で対等

 

結婚生活は、男のやること女のやることといった規範はなく、とにかく手のあいた方が料理であれ、掃除であれ”家事”をするというのが、ごく自然のやりかただったという中野家。子どもの洋服を作る場合、妻の松子さんがデザイン画を描き、中野さんが製図をし、松子さんがミシンで縫っていました。中野さんが今日ごく自然に煮豆や茶碗蒸をつくるのも、その延長線上にあること。中野さんが69歳のときに松子さんは他界しましたが、家事については、人の手を借りなければ…といった不自由をしたことは全くなかったといいます。

 

 

コツコツとやっている好きなこと
あなたも周りに共有してみませんか?

 

ご自身の性格について、「私はもともと”一番”が嫌い。二番、三番が好き。これは生まれつきの性格です。一番でなくていい。ただ、いつも一番を抜くような努力をしていました」と話す中野さん。

 

健康の秘訣については、「外で運動をするといったことはしていません。家事を楽しんで一人でやり、緑茶をよく飲んでいるのが私の健康法です」と語ります。

 

「過ぎたことを悔やんでも、先のことを慮っても仕方ないこと。朝、起きたら一汁一菜をしみじみと味わい、おいしいなァと思うこと。そして自分の話はほどほどに、人の話に耳をかたむけ、今日をすこやかに暮らす…という思いで一日を始めます」

 

自分が楽しんでやっていることを、ちょっとだけ周りの人におすそ分けしてみる。ちょっとした行動で、暮らしが豊かになる、そんなきっかけにこの記事がなればいいなと思います。

 

タッパーに詰めたブルーベリージャム

 

 

ライタークレジット:
写真・文=馬場純子(泉区ローカルライター)

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

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