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緑園に生まれたみかん農家の挑戦 泉区新橋町・中丸果樹園

相鉄いずみ野線の中でも住宅街のイメージが強い、緑園都市。その緑園都市駅から歩いて行けるみかん狩り農園があると聞き、その意外性が気になって足を運びました。果樹園を営む中丸雄士さんと陽子さんは、おいしいみかんを作るために前へ前へと進み続ける、気力に満ちたご夫婦でした。

 

 

中丸果樹園のみかん畑。現在5種類の柑橘を育て、近くのハウスでも新たな品種に挑戦している

 

緑園都市から歩いて行けるみかん狩り

 

緑園都市駅から徒歩15分。駅前の坂を登り切った先に広がる住宅街をさらに進んだ新橋町に、中丸果樹園があります。「浜なし」や「浜ぶどう」…横浜のブランド果実のバリエーションは増えつつありますが、まだまだ耳慣れない横浜市でのみかん栽培。先代では野菜中心の農地だったところ、雄士さんご夫妻の代となり、みかん栽培は2014年からスタートさせたそうです。

 

みかん狩り自体は3年前にプレオープンし、本格的なオープン後、今年で2年目の中丸果樹園。「現在みかん畑になっている場所は、杉や梅が鬱蒼と茂る土地だったんです。ほとんどが斜面のこの土地を、先代からどうにかしたいと考えていて」と話す雄士さんは、手付かずの状態だった土地を開拓していった当時を振り返ります。

 

開拓して手に入れた約6,000坪の広い土地に、どうしてみかんを植えたのか尋ねると、「最初は『斜面といえばみかん』というイメージから、あまり知識もなく始めてしまったんです」と雄士さんはカラッと笑って話します。

 

なだらかな斜面を覆うようにみかんが植えられている。取材時、夕日に照らされたみかんがこがね色に輝いていました

 

「毎年毎年、新しい発見があるんです」と生き生きと話す雄士さん。近隣の戸塚区や瀬谷区を合わせても、みかん狩りを営む果樹園は4、5園ほどだそうで、一つひとつの方法を試しながら成功への道を探っています。講習会への参加や近隣農家との協力、オンライン上の動画なども参考に自ら勉強を積み重ねる雄士さんですが、それでもみかんを育てる上での苦労は尽きないそうです。

 

「今年は梅雨が短かったせいで、カメムシなどの害虫が大量に発生しました。またこの地は冬になると、氷点下7℃を下回ることもあります。そこまで冷えると実が凍って、果肉がパサついたみかんになってしまうんです。なので毎年冬は温度計と睨み合い、品種によっては保温のための袋を実に一つひとつかけていきます」と雄士さんは、丹念に剪定された樹が広がる畑を見つめながら話します。

 

丁寧に育てられたみかん。取材当時楽しめたのは宮川早生(みやがわわせ)という品種

 

 

周りとの関わりを育てていく

 

中丸果樹園にはみかんの他にもブルーベリーが植えられていて、6月頃からはブルーベリー狩りも楽しめます。「観光農園」として力を入れていくなか、「人と関わることは元々好きなんです」と陽子さんは明るく話します。

 

中丸果樹園の果物は、ジャムやジュースといった加工品として、地域のパン屋やレストランにも並びます。近隣店舗とのコラボレーションは、陽子さんの地道な働きかけで実現したそうです。「まずは自分の見知った店舗を中心に連絡しました。ダメで元々の気持ちがある中で、地元の農家だからと応援してくれる店舗もあって」とうれしそうに話してくれた陽子さんは、取材当日もたくさんのお客さんや受付テントの周りではしゃぐ子どもたちに気さくに声をかけます。

 

素材の素朴な味わいが楽しめる中丸果樹園のジャム。ジュースは人気で今年の分はすでに完売とのこと

 

 

改善を一つずつ積み重ねて

 

みかん狩りに訪れたお客さんに快適に過ごしてもらえるよう、中丸果樹園は現在進行形で進化しています。駐車場はバスも停められる規模で整備し、トイレも水洗式を完備。その甲斐もあってか、中丸果樹園を訪れる人は地元の方に留まらず、川崎市や東京に住む方々も増えているそうです。

 

植えるみかんの品種も、寒くなる前に実る品種へ徐々に切り替えていくことで、秋の心地よい時期にみかんを思いっきり楽しんでもらえるような畑づくりをしていきたいと話す雄士さん。その意欲は、ハウスでの新しい品種栽培へも向けられます。

 

「現在ハウス栽培している『あすみ』という品種は、まだ直売所に少量出荷できるくらいなのですが、気に入って買ってくださる方も多くて。中にはお子さんがこれしか食べないから、と買っていかれる方もいるんですよ」と雄士さんは顔をほころばせます。

 

豊かに色づいたみかん

 

 

着実に広がる、緑園のみかん狩り

 

さらに近年では感染症の拡大により遠方へ行くのが難しい近隣の小学校が、中丸果樹園へ訪れることもあるといいます。

 

「社会情勢でさまざまな制限がある中でも、子どもたちが畑を楽しそうに走り回っているのを見るとうれしくなります。学校行事として訪れたあと、家族と個人的に遊びに来てくれる子もいたりして」と話す陽子さんの言葉から、地域とのつながりが着々と育まれていることがうかがえます。

 

中丸果樹園の斜面からは、新橋町の町並みが見える

 

「天候などさまざまな要因で、できるみかんの様子も変わります。中にはうまくいかないこともありますけど、くよくよしても仕方がない。失敗は次に生かしていこう、という気持ちで取り組んでいます」と前向きに話す陽子さんに、雄士さんもうなずきます。

 

「いろいろ工夫してみかんを作っていますが、自分たちで収穫して、自分たちで売って…だとここまでできないと思います。みかん狩りに足を運んでくれた人が『おいしい』と目の前で言ってくれるのはやりがいにつながります。そしてこうして畑を見てもらえるから、さらにきちんと作っていこうと思えるんです」と雄士さんは穏やかに話します。

 

みかん作りに情熱を注ぎ、職人肌を感じさせる雄士さんと、人当たりがよく周りへの気配りを欠かさない陽子さん。得意分野で分担しながらも、来た人に喜んでもらいたいという共通の気持ちを持っている2人だからこそ、始めた挑戦が着実に地域に根付きつつあるのだと感じます。

 

緑園都市を盛り上げる新たなランドマークが、今新橋町に芽吹いています。

 

 

写真・文=佐藤沙織(泉区ローカルライター)

 

 

##Information:

中丸果樹園

住所:泉区新橋町1793

電話:090-6938-2233

Twitter:@Nakamarukajyuen

 

*2022年度のみかん狩り

日時:2022年10月22日(土)〜12月11日(日)9時30分〜15時

料金:大人(食べ放題、お持ち帰り用袋付) 1100円 、小学生(食べ放題、お持ち帰り用袋付)800円 、幼児(食べ放題のみ)300円 、乳児無料

 

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

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