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田んぼ広がる泉区を満喫 地域の風物詩・相模凧

農村歌舞伎や太鼓・お囃子など、郷土芸能や郷土文化を保存し次世代につなげる活動が盛んな泉区。なかでも相模凧は泉区で400年の歴史があるといわれ、例年5月5日に天王森泉公園近くの田んぼで地域の人々を楽しませています。
今年は悪天候のために残念ながら中止となってしまいましたが、相模凧いずみ保存会の活動について会長の清水幸男さんと広報の柴崎富士夫さんにお伺いしました。

 

(右から)相模凧いずみ保存会会長の清水幸男さん、お手伝いに来ていたお孫さんの寧音ちゃん、広報担当の柴崎富士夫さん

 

凧を囲んで楽しむ地域のお祭り

 

子どもたちの健やかな成長と五穀豊穣を祈願して端午の節句に揚げられる相模凧は、正方形が特徴。相模凧いずみ保存会ではこれまで初節句を迎える子どもの名前や月と波、日の丸などの絵柄を描いていましたが、今年は2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿(かまくらどの)の13人』にちなみ、宇治川の合戦での梶原景季(かげすえ)と佐々木高綱の先陣争いを描いた大凧を製作していました。

近年は凧が揚げられる場所の確保が難しくなっていますが、元々は「地元の農家さんたちが『お酒が飲めるぞ』と楽しみにしていた地域のお祭りみたいな感じだった」(柴崎さん)といいます。昔の写真を見ると、凧を囲んで皆で輪になってお酒を飲んでいるものもあったそうです。

使い終わった後、子どもたちのお絵描きが入った今年の下絵

 

子どもたちもお手伝いする大凧づくり

 

大凧づくりは約1カ月前の4月上旬から開始します。昨年は四辺が2メートル70センチでしたが、「誰かが『もっと大きいのがいい』って言うから今年は3メートルにしたんだよ」と清水さん。現在凧の製作に携わっているのは4人で、若い頃から続けている清水さんがほかのメンバーに直伝しながら作っているそうです。

(相模凧いずみ保存会提供)

 

まずは鉛筆で下絵を描き、マジックで太い線画にした後、子どもたちも手伝いながら色付け。武者の髭は、ペイントが乾いてから上から筆を一気に走らせます。

 

(相模凧いずみ保存会提供)

 

骨組みには去年の竹を使い、細く切った竹ひごを縦横斜めに配置して、木工ボンドとすずらんテープで固定します。凧絵の貼り付けも木工ボンドで行い、乾くまで洗濯ばさみで留めておきます。少しでも軽くするために、竹ひごの数は最小限に留めるそうです。

 

「結び方や貼り方はいつも会長に従いながらやっていますね。骨組みのところを真四角にするときの手順なんかなかなか分からなくて(笑)」と語る柴崎さん。完全に習得するにはなかなか時間がかかりそうです。

 

今回固縛したのは実に114カ所(相模凧いずみ保存会提供)

 

のりが乾いたら、凧を均等に引っ張るために「糸目受け」を取り付け、糸目をつなぎます。大凧にはその10倍の長さ、今回なら約30メートルの糸目を付けるのが基本で、風が強いときは3本付けて安定させることも。漁師さんが使う網と同じ素材なので丈夫で切れないそうです。

 

弓のような形をした「うなり」。凧の裏側の上部に取り付けると、風を受けて「ブーンブーン」と音がするそう

 

郷土文化を次の世代に

 

例年、5月5日当日は、これまで製作したさまざまな相模凧の展示のほか、大凧につないだ縄にも触れることで、子どもたちにも風の力を感じてもらいます。

 

「ちょうどいい風が吹いていれば、縄をしばっておいて、ただ上にポッと放せば上に飛んでいく。大小関係なく、人が引っ張らなくても風がそのまま運んでいってくれるんですよ」と清水さん。一度400メートルくらいの高さまで揚がると「夜まで落っこちてこない」くらいだそうです。

 

区内の小学校での凧づくり教室も行っている相模凧いずみ保存会の皆さん。技術を一緒に継承してくれる仲間も募集しています。

西が岡小の生徒たちと公園で自作の凧揚げ(相模凧いずみ保存会提供)

 

写真・文=齊藤真菜(泉区ローカルライター)

 

Information
相模凧いずみ保存会

問合せ先:080-1053-1490(清水会長携帯)
090-5404-9522(柴崎さん携帯)
※携帯へのご連絡の際は、先にSM(ショートメール)で要件をお伝えください
fujio.shiba.0140@gmail.com(柴崎さんメール)
https://www.city.yokohama.lg.jp/izumi/shokai/dentoubunka/sagamidako/iz-tako.html

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

 

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