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本格歌舞伎が泉区に! 横浜唯一の横浜いずみ歌舞伎の挑戦

日本を代表する伝統文化の一つ・歌舞伎。横浜市では唯一、泉区に「横浜いずみ歌舞伎」として継承されています。コロナ禍で定期公演が中止となった今、どのような形で普及・継承活動をしているのかを横浜いずみ歌舞伎保存会会長の馬場勝己さんにお伺いしました。

 

横浜いずみ歌舞伎保存会会長・馬場勝己さんの第24回定期公演「寺子屋」松王丸でのいでたち(提供:横浜いずみ歌舞伎保存会)

 

区民の手による本格歌舞伎

 

横浜いずみ歌舞伎保存会は、大正から昭和にかけてこの地で活躍した市川花十郎率いる農村歌舞伎の気風を受け継ぎたいと、1995年に公募で集まった区民で旗揚げされました。

 

横浜いずみ歌舞伎の特徴の一つは、本格歌舞伎を目指していることです。舞台セットなどの大道具は歌舞伎座を拠点にする会社・歌舞伎座舞台、衣裳は歌舞伎座を運営する松竹からレンタルしています。またメイクも歌舞伎役者の先生にしてもらいます。公演会場の泉公会堂(泉区和泉中央北)が本格的な歌舞伎舞台になるわけです。

 

神奈川県立青少年センターで毎年行われる「かながわ伝統芸能祭」で公演した際も「横浜いずみ歌舞伎は舞台も衣裳も綺麗で本格的だから、観るのが楽しみだよ」などと、観客から声をかけられたそうです。

 

特徴の二つ目は、稽古をすれば、老若男女問わず歌舞伎役者になれることです。10月の定期公演に向けての稽古は、例年4月から始まり、毎週土曜日に行われています。ここできちんと稽古を積めば、本物さながらの舞台に立ち、歌舞伎役者が袖を通したかもしれない衣裳をまとい歌舞伎を演じることができるのです。

「歌舞伎ファンにとってはたまらない体験になります。当初、私は裏方をやっていましたが、一度舞台に立った途端、病みつきになりました」と馬場さんはにこやかに笑います。

 

特徴の三つ目は、区民の手作りであるところです。役者も小道具も音響も運営も、すべて区民が担っています。大道具は松竹の大道具さんと一緒に組み立てます。

 

第24回(2019年)定期公演「芝居前泉賑」の模様(提供:横浜いずみ歌舞伎保存会)

 

コロナ禍で一転 伝承に黄色信号

 

新型コロナウイルス感染症の拡大は、横浜いずみ歌舞伎の活動にも大きな影響を与えています、と馬場さん 。

 

まず、毎年10月第3土曜日・日曜日に開催していた定期公演は、2019年を最後に中止の状態が続いています。「2020年は25回目の記念公演だっただけに中止になってとても残念です。楽しみにしてくださった皆様にも申し訳ない気持ちでいっぱいです」と馬場さんはとても残念そうな面持ちでした。

 

また、次代を担う子どもたちに歌舞伎を知ってもらうための普及活動もコロナ禍では思うようにできずにいます。

 

「歌舞伎は声を張って演技しなければならないため、稽古も休止が続いています。このような日々が長引くと、舞台で声が出なくなるのではないかと心配な気持ちになります」(馬場さん)

そのため、2022年1月には、感染対策を万全にしながら稽古を再開する方向で検討しているそうです。

 

なお、コロナ禍でも横浜いずみ歌舞伎を知ってもらうために、2020年10月には『横浜いずみ歌舞伎衣裳・小道具展』を開催しました。泉区役所1階の区民ホールにて、衣裳や小道具を展示したほか、パネル展示や過去の公演動画の放映などを行いました。今年も10月4日から8日まで開催されます。

 

 

2020年10月に開催された『横浜いずみ歌舞伎衣裳・小道具展』(提供:横浜いずみ歌舞伎保存会)

 

 

将来の夢は、横浜市中心部での興行

 

長引くコロナ禍により、今までに経験したことがない活動休止の状況下において、保存会会長の馬場さんとしてはどのような夢をもっているのでしょうか。

 

「東京まで行かなくても横浜で歌舞伎を観られる。そんな時代になったらいいなと思っています。現在は泉公会堂での定期公演ですが、将来は横浜市の中心部でも公演してみたい。そのためには横浜いずみ歌舞伎を多くの人に知ってもらい、一緒にやっていきたいという人を増やしていく必要があります。

 

現在は一部の小学生に教えていますが、進学とともに離れていくのが現状です。今後は地域の小中学校と連携して伝統文化を伝える活動に力を入れていきたいと考えています」

 

こう語る馬場さんの目には、未来に続く横浜いずみ歌舞伎の姿が映っているのかもしれません。

 

公演が再開した暁には皆々様のご来場をお待ち申し上げ候。(提供:横浜いずみ歌舞伎保存会)

 

「人とのつながりを大切にしたい」馬場さんの熱い思いが活動の推進力に

 

今回私がお話を伺った馬場さんは、43年前に、生まれ育った横浜市の西区から、泉区に転居したそうです。泉区の好きなところをお聞きすると、「やはり自然が多いことが一番ですね。特に上飯田のあたりや和泉川流域は散歩に最適です。泉区はスポーツが盛んなところもいいですね。実は私は体育指導委員も長いことやっていました。シニアソフトボールは全国大会に出場するほどですし、少年野球も有望な選手を輩出しています」。確かに、泉区は緑が多くスポーツ施設も多数あります。

 

馬場さんは現在、横浜いずみ歌舞伎保存会の会長のほか、地区の自治会長、さらには、泉区連合自治会町内会長会の会長も兼任されています。「私は人のつながりを大切にしたいと常々思っていて、地域の皆さんと力を合わせて、歌舞伎の継承もスポーツも地域のくらしも大事にしていきたいと考えています。微力ながら、皆さんのお役に立てれば本望です」と馬場さん。未来に伝えたい伝統文化は、馬場さんのような熱い思いを持った人々によって受け継がれているのだな、と私は感じました。

 

泉区役所にて素顔の馬場勝己さん

 

##ライタークレジット:
写真・文 = 蒲 喜美子(泉区ローカルライター)

 

##Information:
横浜いずみ歌舞伎保存会

ホームページ:https://izumi-kabuki.jimdofree.com/
mail: yokohamaizumikabuki@gmail.com

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

 

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