小間園芸
地域とともに農業を。小間園芸直売所
市営地下鉄「立場駅」からバスで10分ほどに位置する小間園芸直売所。立場駅構内でも直売を行っており、野菜や果物のほか、手づくりの加工品も人気です。お客さまの暮らしに寄り添いながら生産・直売活動を行う3代目園主・小間一貴さんにお話を伺いました。
「うちで育った野菜がどこに行くのか興味があった」
畑が多く、代々続く農家が多い泉区上飯田町。この地で約80年間野菜を育ててきた小間園芸は、三代目園主の小間一貴さんを中心に、ご両親、パートスタッフの5人ほどで運営しています。じつは、農家を継ぐまでは運輸業界にいたという小間さん。
「祖父の代から農家で、いずれは継ぐだろうと思っていましたが、父から10年は社会に出なさいと言われていて。今は直売ですが、昔は市場出荷のみだったので、子どものころ『うちの野菜はどこに行くんだろう?』と思いながら野菜が運ばれる大きなトラックを見ていました。そこから自然とトラックの運転に興味をもち、農家を継ぐ前のしばらくは運輸業に。野菜を運んだこともありますし、そのほかにもいろいろなものを運びました」
バスの待ち時間に次々と売れていく野菜たち
小間園芸は、二代目園主が市場出荷と並行して直売を始め、今の直売を中心とするスタイルに至ります。現在は、毎週火・木・土曜にひらく畑近くの「小間園芸直売所」に加えて、毎週火・木曜は立場駅構内でも野菜や加工品を販売。駅販売は、区役所主体・運営の「泉まちおこし本部」(注1)の事業の一環として20年前に始まったもので、現在は小間さんをはじめとした地元民が運営しています。
小間園芸直売所には、近所に暮らすファミリーや学生、そして地域外からも口コミをもとにさまざまなお客さまが訪れます。そのなかには近所のよこはま地産地消サポート店(注2)のシェフも。駅のほうは、通院や買い物などで日常的にバスを利用する方々の利用が多いといいます。
「バスの待ち時間や乗り継ぎの合間に立ち寄れるので、なかなか畑のほうまで来られない方にも重宝されています。その光景は結構面白いですよ。バスが来たら一気にお客さまでにぎわい、売れていくんです」
お客さまの暮らしに寄り添う野菜と、食卓を支える加工品
「こだわっているのは品種選びです」と話す小間さん。小間園芸の野菜は、これまでたくさんの品種を試しながら徐々に確立し、今でも新しい品種が出るたびに試しているそうです。
また、地域の顔が見える直売農家だからこそ、お客さまの生活をイメージすることも大切にしています。たとえば、家族の単位が少なくなっている昨今、小さめのキャベツや大根、ミニサイズの白菜ができる品種を選んだり、同じ大根でも冬は煮物に、夏はサラダに向いている品種というふうに季節に応じて品種を変えたりしています。
そんな小間園芸で特に人気の野菜は、夏に並ぶトマト、とうもろこし、枝豆。
「この3種類は特に品種によって味が大きく変わるので、目当てに来られる方も多いです。トマトが嫌いなお子さんが、うちのだったら食べると言ってくれたときは嬉しかったですね。トマトも最初は色々品種を試しました。収穫も、木の上で真っ赤にしてからとるので味や香りが格別です」
とうもろこしは、夜のうちに蓄えられた糖分が十分にある“日の出前”が勝負。朝の3時や4時には収穫を終えることで、甘くておいしいとうもろこしが直売所に並びます。
また、「ご飯づくりの手助けをしたい」との思いで販売している加工品も人気です。小間さんのお母さまの手づくりで、トマトのロスを防ぐためにつくったケチャップが原点。だんだんと種類が増えていき、今では約30種類ほどに。それらは、忙しい方々の食卓を支える一品でもあり、「こういう食べ方もあるよ」「この野菜を加工するとこうなるよ」といったレシピの提案でもあります。
「じつは知り合いの農家から仕入れた材料で、手づくり味噌やお餅、こんにゃくなどもつくっているんです。原材料はうちではないけど、野菜の消費につながればいいなと。味噌汁やお雑煮の材料があれば、そこにうちの野菜を入れてもらうことができるし、大葉みそを野菜につけて食べるのもおいしいですよ」
お客さまに教えたり、教えてもらったり
自然豊かで、新鮮な野菜が購入できる場所がたくさんある泉区。消費者と生産者の距離が近いのも特徴です。
「野菜を買うときの選択肢が広がってきているのがいいですよね。だから私も、もっとこの地域と一緒に農業をやっていきたいと思っているんです」と小間さん。
直売では常日頃こんな魅力を感じているそうです。
「お客さまと直接ふれ合える場所。こちらが野菜の食べ方をお伝えするだけではなく、逆にお客さまにレシピを教えてもらうこともあるんです。そういった会話から細かなニーズもわかってくる。日々コミュニケーションがとれることが本当に大きな魅力だと思います」
さらに地域と農業をつなげる小間園芸の取り組みの一つに、プランター販売があります。プランターに苗を植えて販売し、地域住民が気軽に農業体験をできるような仕組みをつくっているのです。収穫しながらその場でパクりと食べられるミニトマトは、子どもたちにも大人気。
「畑での体験農業はやはり少しハードルが高いですよね。まずはプランターから馴染んでもらい、農への興味につながるとっかかりになればいいなと思います」
生産者との会話を楽しみに、そして農業へのちょっとした入り口をのぞきに、ぜひ直売所に足を運んでみてください。
小間園芸直売所
HP:https://komaengei.com/
住所:神奈川県横浜市泉区上飯田町3602
日時:毎週火・木曜 AM9:00〜PM13:00
毎週土曜 AM9:00-PM17:00
※8~9月は秋冬野菜の準備のため、毎週火曜日と土曜日の営業となります。
※詳細は、店舗に御確認ください。
注1:区内の商業・農業・福祉の魅力を区の内外にPRし、泉区の魅力を高め、泉区を活性化することをめざした活動。
注2:横浜市内産の農畜産物をメニューに取り入れた飲食店を「よこはま地産地消サポート店」と認定しています。
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