れすとらん ぺたる どぅ さくら
岡山県にある一本桜から、一枚の花びらが横浜市泉区に舞い降りた。
相鉄いずみ野線、弥生台駅前の一角に、フランスの街角にありそうな、素敵なフレンチレストランがあります。その名前は「レストラン ペタル ドゥ サクラ」。桜の花びらという意味です。
オーナーは、国内外のミシュラン星付きレストランで経験を積み、数多くの料理人から背中を追われる難波秀行(なんばひでゆき)シェフ。そんな一流シェフの原点は、生まれ故郷である岡山県津山市でご実家が営まれていた喫茶店「喫茶サクラ」でした。
地域の人々からマスターと慕われたお父様の背中を見て育ち、家業を継ぐ修行道中でフレンチに魅せられた難波シェフ。今はなき喫茶店の思いを受け継ぎ、巡り巡ってたどり着いた弥生台の地で、深く根を張ろうとされています。
泉区で育った食材を極上の一皿に仕上げる「レストラン ペタル ドゥ サクラ」の魅力に迫ります。
難波シェフの料理には、40軒を超える生産者の方々が関わっています。難波シェフは日々さまざまな畑を巡り、生産者の思いを聞きながら、食材の状態を把握しているのです。
例えば、この鮮やかな一皿には、3種類のナスが使われています。
「朝採れ茄子と鮮魚の温前菜 地元の農家さんの野菜とフレッシュハーブたち」一番下のハーブは、ナスの木の下に生えているもの。この一皿で畑の景色を再現
左端から顔をのぞかせているのは、輪切りにされた生ナスです。鮮魚の下にはナスのピューレと1本のナスが隠れています。
「この料理に使われているナスは、全て私が収穫したものです。まるごと食べていただきたいナスは、皮が柔らかくなる朝一番を狙って収穫しています。ナスの皮は夜中にグーンと水を吸収した朝一番が最も柔らかく、日が当たるほどに固くなっていきます」
ピューレとして使うナスは、成熟して少し固くなった状態のものが適しているそうです。「種が少しプチプチしてきたくらいのナスの方がおいしいです。一つ一つの野菜に触りながら自分で収穫すると、調理をするときにその特性を生かすことができるんです。もう1種類のナスは、生で食べられる品種を農家さんにお願いして作っていただきました」
難波シェフによれば、畑を訪れて生産者と対話しながら食材を使うと、料理の仕上がりが格段に上がるといいます。
「例えば、雨降りが続いたときに、泉区の『さんや農園』さんにブルーベリーを収穫しにいったことがあります。そのとき園主の荒木さんに『雨が続いたから少し水っぽいし、酸味が強い品種しかないけど大丈夫？』と教えていただきました。それならそれで酸味と水分を生かす料理を考えようと方向転換することができます」
お付き合いのある生産者さんの紹介コーナー。「農家さんに失礼のない料理を作ろう」という覚悟も込めて
新しいメニューの着想を得るためにも畑を訪れているそうです。
「この料理にもう一つ何かの香りを組み合わせたいなと思ったときに、区内でハーブ園を営まれている笛木さんの畑に入らせていただくんです。畑で嗅いだハーブの香りを思い出しながら料理を組み立て、後日、改めて収穫させていただいています。いつも突然ご連絡して伺うので、笛木さんには本当に申し訳ないのですが、快く受け入れてくださいます」
こうした訪問が可能となるのは、生産者さんと深い信頼関係を築いている難波シェフだからこそです。
「食材には生産者さんの人柄が出ますし、食材を一番よく知っているのは生産者さんですから。その食材をどんな思いで作っているのかをお聞きすることで、最高の状態で生かすことができます。何よりも思い入れをお聞きしながら料理を考えること自体が楽しいですよね。その結果、お客様が喜んでくださったら、私自身が幸せを感じることができるんです」
難波シェフが作るフレンチには、薬膳の考え方が取り入れられています。その季節に必要とされる栄養素が一皿に凝縮されているのです。
一流シェフでありながら、気さくなお人柄が魅力的な難波シェフ。まるでお皿に絵を描いたような盛り付け
例えば、夏の前菜にナスを活用するのは、その季節の体に必要な食材だから。
「ナスには体を冷やす作用があるので、夏に適した食材です。ただし、体を冷やすものばかりを食べるのも良くないので、体を温める食材も組み合わせる必要があります。そこで、シソやスパイス、オマール海老のオイルをかけたりしています。薬膳の考え方でいえば、陰と陽のバランスが大切なんです」
「近所で育ったやまゆりポークを 地元のゴーヤとおからで薬膳フレンチ風・ゴーヤチャンプルー」豚肉は低温真空調理法で、しっとりとした食感に
こちらの可憐な料理は、沖縄の郷土料理「ゴーヤチャンプルー」をフレンチに再構築した一皿です。
「豚肉をメインに、その周りにはゴーヤをあしらっています。豆腐の要素としてはおからを。卵の要素としてはマヨネーズを組み合わせています。実は、我々が当たり前のように食べている伝統的な料理には、意識せずとも薬膳の考え方が反映されているんです。料理を学べば学ぶほど、昔から受け継がれている料理は理にかなっていることがわかります。私はフレンチの技法を使って、昔ながらの料理をアレンジしているだけなんです」
さらに地元の食材を使用するのが、難波シェフの流儀です。旬の食材には、その季節に必要な栄養素が含まれているように、その土地の風土で育った食材には、地元の人々に必要な栄養素が含まれているといいます。
「まさに大地の恵みですよね。地元の食材は、体に必要なんですよ。だから私の料理は、地元の畑にあるものを使うのが大前提です」
難波シェフが地域に根差した料理を追求するのは、師匠の教えはさることながら、原点である「喫茶サクラ」の価値観が根底にあるように思えてなりません。喫茶サクラは、地域の人々の憩いの場だったといいます。
「三世代にわたって来てくれたお客様もいらっしゃいました。地域の方々が集まって、ずっと仲良くつきあっていける居場所だったんです。『ペタル ドゥ サクラ』は、あくまでも一枚の花びらだと思っています。私にとっての幹は、祖父と父が築き上げた『喫茶サクラ』なんです」
戸塚区の大倉陶園さんの作品や「喫茶サクラ」で使われていた食器のコレクション
難波シェフは泉区出身ではありません。しかし、数々のご縁を経てたどり着いた横浜市で泉区の生産者の方々に出会い、近くに店を構えたいと弥生台で創業。泉区に対する思いには、並々ならぬものがあります。
その思いの表れの一つが、地域での教育活動です。次世代の育成に積極的な難波シェフは、本業の合間をぬって小学校の授業に参加されています。例えば「味覚の授業」では、五味（塩味・酸味・苦味・甘味・うまみ）を個別に味わうことで、感性が磨かれ、他人の変化に気がつくことができる思いやりの心を養うことができるといいます。
小さな観客たちが厨房の様子が見えるよう窓の下に用意された脚立。難波シェフは、子どもたちの憧れの存在です
さらに難波シェフは、地域の方々をつなぐ存在でもあります。
「自分が専門外のことは、その専門の方に任せたいと考えています。例えば、当店でご提供するケーキは、お向かいのパティスリーさんにお願いし、焼き立てのバゲットは近隣のベーカリーさんにお願いしています。さまざまな方々とつながり、助け合いながら、この地域に貢献していきたいですね」
お店を超えたチームを築き上げる難波シェフ。その姿はまさに、人々が集い愛でる一本桜のようです。
窓の外は桜並木。春には桜が咲き誇る様子を眺めながら、食事を楽しむことができます
外観。フレンチを気軽に楽しんでほしいとの思いから、お子様連れのご家族が利用しやすい「キッズ＆ベビー開放デーatフレンチ」を毎月開催
【restaurant petale de Sakura（レストラン ペタル ドゥ サクラ）】 住所：神奈川県横浜市泉区弥生台 5-2 アクセス：相鉄いずみ野線弥生台駅から徒歩1分 営業時間：Lunch11:30 – 15:00[14:00L.O] Dinner18:00 – 22:00[21:00L.O] 定休日：月曜日（要確認） 電話番号：045-443-5876
泉区の大地の恵みを、極上の一皿に。横浜に舞い降りた桜の花びら「レストラン ペタル ドゥ サクラ」の思い
岡山県にある一本桜から、一枚の花びらが横浜市泉区に舞い降りた。
相鉄いずみ野線、弥生台駅前の一角に、フランスの街角にありそうな、素敵なフレンチレストランがあります。その名前は「レストラン ペタル ドゥ サクラ」。桜の花びらという意味です。
オーナーは、国内外のミシュラン星付きレストランで経験を積み、数多くの料理人から背中を追われる難波秀行(なんばひでゆき)シェフ。そんな一流シェフの原点は、生まれ故郷である岡山県津山市でご実家が営まれていた喫茶店「喫茶サクラ」でした。
地域の人々からマスターと慕われたお父様の背中を見て育ち、家業を継ぐ修行道中でフレンチに魅せられた難波シェフ。今はなき喫茶店の思いを受け継ぎ、巡り巡ってたどり着いた弥生台の地で、深く根を張ろうとされています。
泉区で育った食材を極上の一皿に仕上げる「レストラン ペタル ドゥ サクラ」の魅力に迫ります。
一皿で3種類のナスを使い分け。畑に通い詰めるシェフの手腕
難波シェフの料理には、40軒を超える生産者の方々が関わっています。難波シェフは日々さまざまな畑を巡り、生産者の思いを聞きながら、食材の状態を把握しているのです。
例えば、この鮮やかな一皿には、3種類のナスが使われています。
「朝採れ茄子と鮮魚の温前菜 地元の農家さんの野菜とフレッシュハーブたち」一番下のハーブは、ナスの木の下に生えているもの。この一皿で畑の景色を再現
左端から顔をのぞかせているのは、輪切りにされた生ナスです。鮮魚の下にはナスのピューレと1本のナスが隠れています。
「この料理に使われているナスは、全て私が収穫したものです。まるごと食べていただきたいナスは、皮が柔らかくなる朝一番を狙って収穫しています。ナスの皮は夜中にグーンと水を吸収した朝一番が最も柔らかく、日が当たるほどに固くなっていきます」
ピューレとして使うナスは、成熟して少し固くなった状態のものが適しているそうです。「種が少しプチプチしてきたくらいのナスの方がおいしいです。一つ一つの野菜に触りながら自分で収穫すると、調理をするときにその特性を生かすことができるんです。もう1種類のナスは、生で食べられる品種を農家さんにお願いして作っていただきました」
難波シェフによれば、畑を訪れて生産者と対話しながら食材を使うと、料理の仕上がりが格段に上がるといいます。
「例えば、雨降りが続いたときに、泉区の『さんや農園』さんにブルーベリーを収穫しにいったことがあります。そのとき園主の荒木さんに『雨が続いたから少し水っぽいし、酸味が強い品種しかないけど大丈夫？』と教えていただきました。それならそれで酸味と水分を生かす料理を考えようと方向転換することができます」
お付き合いのある生産者さんの紹介コーナー。「農家さんに失礼のない料理を作ろう」という覚悟も込めて
新しいメニューの着想を得るためにも畑を訪れているそうです。
「この料理にもう一つ何かの香りを組み合わせたいなと思ったときに、区内でハーブ園を営まれている笛木さんの畑に入らせていただくんです。畑で嗅いだハーブの香りを思い出しながら料理を組み立て、後日、改めて収穫させていただいています。いつも突然ご連絡して伺うので、笛木さんには本当に申し訳ないのですが、快く受け入れてくださいます」
こうした訪問が可能となるのは、生産者さんと深い信頼関係を築いている難波シェフだからこそです。
「食材には生産者さんの人柄が出ますし、食材を一番よく知っているのは生産者さんですから。その食材をどんな思いで作っているのかをお聞きすることで、最高の状態で生かすことができます。何よりも思い入れをお聞きしながら料理を考えること自体が楽しいですよね。その結果、お客様が喜んでくださったら、私自身が幸せを感じることができるんです」
郷土料理をフレンチに再構築。基本に忠実で新しい、難波シェフの流儀
難波シェフが作るフレンチには、薬膳の考え方が取り入れられています。その季節に必要とされる栄養素が一皿に凝縮されているのです。
一流シェフでありながら、気さくなお人柄が魅力的な難波シェフ。まるでお皿に絵を描いたような盛り付け
例えば、夏の前菜にナスを活用するのは、その季節の体に必要な食材だから。
「ナスには体を冷やす作用があるので、夏に適した食材です。ただし、体を冷やすものばかりを食べるのも良くないので、体を温める食材も組み合わせる必要があります。そこで、シソやスパイス、オマール海老のオイルをかけたりしています。薬膳の考え方でいえば、陰と陽のバランスが大切なんです」
「近所で育ったやまゆりポークを 地元のゴーヤとおからで薬膳フレンチ風・ゴーヤチャンプルー」豚肉は低温真空調理法で、しっとりとした食感に
こちらの可憐な料理は、沖縄の郷土料理「ゴーヤチャンプルー」をフレンチに再構築した一皿です。
「豚肉をメインに、その周りにはゴーヤをあしらっています。豆腐の要素としてはおからを。卵の要素としてはマヨネーズを組み合わせています。実は、我々が当たり前のように食べている伝統的な料理には、意識せずとも薬膳の考え方が反映されているんです。料理を学べば学ぶほど、昔から受け継がれている料理は理にかなっていることがわかります。私はフレンチの技法を使って、昔ながらの料理をアレンジしているだけなんです」
さらに地元の食材を使用するのが、難波シェフの流儀です。旬の食材には、その季節に必要な栄養素が含まれているように、その土地の風土で育った食材には、地元の人々に必要な栄養素が含まれているといいます。
「まさに大地の恵みですよね。地元の食材は、体に必要なんですよ。だから私の料理は、地元の畑にあるものを使うのが大前提です」
一枚の花びらから、泉区の人々が集い愛でる一本桜に
難波シェフが地域に根差した料理を追求するのは、師匠の教えはさることながら、原点である「喫茶サクラ」の価値観が根底にあるように思えてなりません。喫茶サクラは、地域の人々の憩いの場だったといいます。
「三世代にわたって来てくれたお客様もいらっしゃいました。地域の方々が集まって、ずっと仲良くつきあっていける居場所だったんです。『ペタル ドゥ サクラ』は、あくまでも一枚の花びらだと思っています。私にとっての幹は、祖父と父が築き上げた『喫茶サクラ』なんです」
戸塚区の大倉陶園さんの作品や「喫茶サクラ」で使われていた食器のコレクション
難波シェフは泉区出身ではありません。しかし、数々のご縁を経てたどり着いた横浜市で泉区の生産者の方々に出会い、近くに店を構えたいと弥生台で創業。泉区に対する思いには、並々ならぬものがあります。
その思いの表れの一つが、地域での教育活動です。次世代の育成に積極的な難波シェフは、本業の合間をぬって小学校の授業に参加されています。例えば「味覚の授業」では、五味（塩味・酸味・苦味・甘味・うまみ）を個別に味わうことで、感性が磨かれ、他人の変化に気がつくことができる思いやりの心を養うことができるといいます。
小さな観客たちが厨房の様子が見えるよう窓の下に用意された脚立。難波シェフは、子どもたちの憧れの存在です
さらに難波シェフは、地域の方々をつなぐ存在でもあります。
「自分が専門外のことは、その専門の方に任せたいと考えています。例えば、当店でご提供するケーキは、お向かいのパティスリーさんにお願いし、焼き立てのバゲットは近隣のベーカリーさんにお願いしています。さまざまな方々とつながり、助け合いながら、この地域に貢献していきたいですね」
お店を超えたチームを築き上げる難波シェフ。その姿はまさに、人々が集い愛でる一本桜のようです。
窓の外は桜並木。春には桜が咲き誇る様子を眺めながら、食事を楽しむことができます
外観。フレンチを気軽に楽しんでほしいとの思いから、お子様連れのご家族が利用しやすい「キッズ＆ベビー開放デーatフレンチ」を毎月開催
【restaurant petale de Sakura（レストラン ペタル ドゥ サクラ）】
住所：神奈川県横浜市泉区弥生台 5-2
アクセス：相鉄いずみ野線弥生台駅から徒歩1分
営業時間：Lunch11:30 – 15:00[14:00L.O] Dinner18:00 – 22:00[21:00L.O]
定休日：月曜日（要確認）
電話番号：045-443-5876