いずみ ふうげつ
戸塚の本店にて撮影
泉区を横断する長後街道沿い、いずみ中央駅から徒歩10分ほどのところに、昔ながらの和菓子屋さん「泉 風月」があります。
「泉 風月」は創業22年。戸塚区にある本店「風月」は、創業35年ほどになると言います。
ご主人の浦川君雄(うらかわきみお)さんによれば「今ではうちの一生餅を背負った子が、お母さんになって来てくれます」とのこと。しばらく地元を離れたお客さんが帰ってきて「あっ、まだやってる!懐かしい~」と喜ばれることもあるそうです。浦川さんは「それが嬉しいですね」と話します。
地域のお客さんに長年愛される泉風月。その魅力に迫ります。
風月のお客さんは7割がリピーター。かつ、今でも新しいお客さんが毎日のように訪れると言います。チラシの宣伝は創業当初に数回だけ。その後は、口コミで商売が成り立っているそうです。
泉風月の外観。緑色の外壁と瓦屋根が目印。
一般的に、和菓子屋と言えば、女性客が8割だと浦川さんは話しますが、風月の場合は男性客が8割。顧客への手土産に購入していく方や、車で通って気になったからと家族連れで来るお客さんが多いそうです。
お客さんに愛される秘訣をお聞きすると「正直にやるしかないんですよね」と浦川さん。日々同じクオリティの和菓子を提供できるよう、材料の配分や工程管理を徹底しているそうです。
お店を訪れたお子さんの目を惹くという華やかな上(じょう)生菓子。(各230円・税込)
添加物を極力控えているのも風月の和菓子の特徴。どら焼きや饅頭などの半生菓子には添加物を一切使っていないと言います。
「今はどら焼き1つをとっても成分表にいっぱい添加物が書いてあるじゃないですか。そういうのは使いたくないんですよね。ただ、使わないと柔らかさや食感が出にくくなるので、ちょっと餅粉を足したり、自然由来の材料で工夫しています」
どら焼きの皮に使われる卵は、泉区和泉町にある大矢養鶏さんのもの。創業当初から素材を生かした和菓子作りを追求しています。
地産地消商品のどら焼き「うまいじゃん」。(150円・税込)
和菓子屋さんの命は、お饅頭の「あんこ」だそう。風月のあんこはしっかり甘いのに重すぎず、いくらでも食べられてしまいそうなおいしさです。
ご自慢のあんこが包まれた「戸塚まんじゅう」の生地には、泉区上飯田町にある農家「小間園芸」さんのお味噌が使われています。
あんこの甘みと味噌の塩気が互いを引き立て合い、口の中でふわっと風味が広がる一品です。
地産地消商品の戸塚まんじゅう(110円・税込)戸塚区にある本店限定。
「お饅頭のあんこが和菓子の基本なんです。それを加工して他の和菓子を作っているんですよ。だからお饅頭がおいしい店は間違いありません。私もよその店に行くと、まずはお饅頭を買います」
ご主人の浦川さんは、またお会いしたくなるユーモアあふれるお人柄が魅力的な方です。
「和菓子なのか、洋菓子なのか、わからないようなものを作るのは嫌なんです。どら焼きにクリームを使ったりね」とお話されたかと思えば「イチゴ大福なんかも邪道だって言って初めは手をつけませんでした。でも売り始めたら今じゃ春のお菓子の中で1番! 当店では苺をチョコレートにちょっと浸すんですよ」とおっしゃいます。 チョコレートは洋菓子なのでは?と率直にお聞きすると「どうせやるならね!それが一つの売りなんです」と、憎めない笑顔とお茶目な回答が返ってきました。
和菓子のネーミングやパッケージにも、浦川さんのユーモアが表れています。
「当店のどら焼きの名前は、横浜言葉の『じゃん』を取り入れて『うまいじゃん』と言うんです。名前がいいと売上が2割くらいアップするんですよ。だから新聞の俳句を読んで、端的な表現を勉強しています」
看板商品の最中は、小判の形をしています。10個以上購入すると、小判だけに「千両箱」と印字された箱に詰めてもらうことができます。このアイデアも浦川さんが考えたそうです。
小判最中(1個230円・税込、箱入り10個2630円・税込)。「一生お金に困らないように」と内祝いとして選ばれる商品。
「昔、地域の農家さんにお嫁さんが来たときに、あいさつ回りでうちの千両箱を配ってくれたんです。そうしたら10年経っても言われるそうですよ。『あんた千両箱しょってきたもんね』って」
浦川さんは、泉区の小中学校の教育活動にも協力されています。
上飯田中学校から届いた手紙。和紙で手作りされた表紙は、美術部の先生の粋な計らい。
「上飯田中学校で和菓子教室をやらせてもらったんですよ。授業でお茶会をやるから和菓子作りができないかと、通勤で本店の前を通る先生が声をかけてくれたんです」
授業では「自分よりも筋がいいんじゃないか」と感じる生徒さんもいたそうで、充実した時間を過ごしたと言います。
生徒さんたちから送られてきたお礼の手紙にも「めったにない機会で楽しかったです」といった言葉が並び、子どもたちも心から楽しんでいた様子が伝わります。
「今でもときどき読み返すんですよ」と言いながら、子どもたちからのお手紙に嬉しさを隠せない浦川さん。
「授業の後、上飯田中学校に通う生徒のお母さんがお店に来てくれたんです。『上の子が持ち帰ってきた和菓子を見て、下の子が授業に参加するのを楽しみにしてるのよ』と声をかけてくれました。でもコロナで去年と今年は行けないから、とても残念です」
ただ、今年は新たなご縁もあったと言います。いずみ野小学校では稲作活動を行っており、子どもたちが作ったもち米で、浦川さんがお赤飯を作って届ける予定なんだとか。「いつもはお餅つきをやるんだけど、今年はコロナでできないそうなんです。その代わりに給食にするからと、お赤飯の注文をいただきました。こんな風に声をかけてくださるんだから、ありがたいですよね」
これからも地域とのご縁を大切にしたいと話す浦川さん。その優しい笑顔に、これまでと変わらず、温かいご縁が引き寄せられていくのではないでしょうか。
後継ぎの息子さんが20年かけて得た裏千家の茶名。茶道のご縁で三渓園でのお茶席用の菓子を創作することも。心得がある息子さんならではの仕事。
慶弔時に欠かせない、一生餅やお赤飯、饅頭も注文可能。
【泉 風月】 住所:泉区和泉中央北3丁目1−11 アクセス:相鉄いずみ野線いずみ中央駅から徒歩10分 営業時間:10:00~18:00 定休日:木曜日、月末の水曜日と木曜日 電話番号:045-805-4775 HP:なし
地元に帰ってきたような、懐かしい笑顔の待つ和菓子屋「泉 風月」
戸塚の本店にて撮影
泉区を横断する長後街道沿い、いずみ中央駅から徒歩10分ほどのところに、昔ながらの和菓子屋さん「泉 風月」があります。
「泉 風月」は創業22年。戸塚区にある本店「風月」は、創業35年ほどになると言います。
ご主人の浦川君雄(うらかわきみお)さんによれば「今ではうちの一生餅を背負った子が、お母さんになって来てくれます」とのこと。しばらく地元を離れたお客さんが帰ってきて「あっ、まだやってる!懐かしい~」と喜ばれることもあるそうです。浦川さんは「それが嬉しいですね」と話します。
地域のお客さんに長年愛される泉風月。その魅力に迫ります。
添加物は極力控えて。飾らない風月の味
風月のお客さんは7割がリピーター。かつ、今でも新しいお客さんが毎日のように訪れると言います。チラシの宣伝は創業当初に数回だけ。その後は、口コミで商売が成り立っているそうです。
泉風月の外観。緑色の外壁と瓦屋根が目印。
一般的に、和菓子屋と言えば、女性客が8割だと浦川さんは話しますが、風月の場合は男性客が8割。顧客への手土産に購入していく方や、車で通って気になったからと家族連れで来るお客さんが多いそうです。
お客さんに愛される秘訣をお聞きすると「正直にやるしかないんですよね」と浦川さん。日々同じクオリティの和菓子を提供できるよう、材料の配分や工程管理を徹底しているそうです。
お店を訪れたお子さんの目を惹くという華やかな上(じょう)生菓子。(各230円・税込)
添加物を極力控えているのも風月の和菓子の特徴。どら焼きや饅頭などの半生菓子には添加物を一切使っていないと言います。
「今はどら焼き1つをとっても成分表にいっぱい添加物が書いてあるじゃないですか。そういうのは使いたくないんですよね。ただ、使わないと柔らかさや食感が出にくくなるので、ちょっと餅粉を足したり、自然由来の材料で工夫しています」
どら焼きの皮に使われる卵は、泉区和泉町にある大矢養鶏さんのもの。創業当初から素材を生かした和菓子作りを追求しています。
地産地消商品のどら焼き「うまいじゃん」。(150円・税込)
和菓子屋さんの命は、お饅頭の「あんこ」だそう。風月のあんこはしっかり甘いのに重すぎず、いくらでも食べられてしまいそうなおいしさです。
ご自慢のあんこが包まれた「戸塚まんじゅう」の生地には、泉区上飯田町にある農家「小間園芸」さんのお味噌が使われています。
あんこの甘みと味噌の塩気が互いを引き立て合い、口の中でふわっと風味が広がる一品です。
地産地消商品の戸塚まんじゅう(110円・税込)戸塚区にある本店限定。
「お饅頭のあんこが和菓子の基本なんです。それを加工して他の和菓子を作っているんですよ。だからお饅頭がおいしい店は間違いありません。私もよその店に行くと、まずはお饅頭を買います」
また会いに来たくなる、ご主人のお人柄
ご主人の浦川さんは、またお会いしたくなるユーモアあふれるお人柄が魅力的な方です。
「和菓子なのか、洋菓子なのか、わからないようなものを作るのは嫌なんです。どら焼きにクリームを使ったりね」とお話されたかと思えば「イチゴ大福なんかも邪道だって言って初めは手をつけませんでした。でも売り始めたら今じゃ春のお菓子の中で1番! 当店では苺をチョコレートにちょっと浸すんですよ」とおっしゃいます。
チョコレートは洋菓子なのでは?と率直にお聞きすると「どうせやるならね!それが一つの売りなんです」と、憎めない笑顔とお茶目な回答が返ってきました。
和菓子のネーミングやパッケージにも、浦川さんのユーモアが表れています。
「当店のどら焼きの名前は、横浜言葉の『じゃん』を取り入れて『うまいじゃん』と言うんです。名前がいいと売上が2割くらいアップするんですよ。だから新聞の俳句を読んで、端的な表現を勉強しています」
看板商品の最中は、小判の形をしています。10個以上購入すると、小判だけに「千両箱」と印字された箱に詰めてもらうことができます。このアイデアも浦川さんが考えたそうです。
小判最中(1個230円・税込、箱入り10個2630円・税込)。「一生お金に困らないように」と内祝いとして選ばれる商品。
「昔、地域の農家さんにお嫁さんが来たときに、あいさつ回りでうちの千両箱を配ってくれたんです。そうしたら10年経っても言われるそうですよ。『あんた千両箱しょってきたもんね』って」
上飯田中学校の生徒から届いた感謝の手紙
浦川さんは、泉区の小中学校の教育活動にも協力されています。
上飯田中学校から届いた手紙。和紙で手作りされた表紙は、美術部の先生の粋な計らい。
「上飯田中学校で和菓子教室をやらせてもらったんですよ。授業でお茶会をやるから和菓子作りができないかと、通勤で本店の前を通る先生が声をかけてくれたんです」
授業では「自分よりも筋がいいんじゃないか」と感じる生徒さんもいたそうで、充実した時間を過ごしたと言います。
生徒さんたちから送られてきたお礼の手紙にも「めったにない機会で楽しかったです」といった言葉が並び、子どもたちも心から楽しんでいた様子が伝わります。
「今でもときどき読み返すんですよ」と言いながら、子どもたちからのお手紙に嬉しさを隠せない浦川さん。
「授業の後、上飯田中学校に通う生徒のお母さんがお店に来てくれたんです。『上の子が持ち帰ってきた和菓子を見て、下の子が授業に参加するのを楽しみにしてるのよ』と声をかけてくれました。でもコロナで去年と今年は行けないから、とても残念です」
ただ、今年は新たなご縁もあったと言います。いずみ野小学校では稲作活動を行っており、子どもたちが作ったもち米で、浦川さんがお赤飯を作って届ける予定なんだとか。「いつもはお餅つきをやるんだけど、今年はコロナでできないそうなんです。その代わりに給食にするからと、お赤飯の注文をいただきました。こんな風に声をかけてくださるんだから、ありがたいですよね」
これからも地域とのご縁を大切にしたいと話す浦川さん。その優しい笑顔に、これまでと変わらず、温かいご縁が引き寄せられていくのではないでしょうか。
後継ぎの息子さんが20年かけて得た裏千家の茶名。茶道のご縁で三渓園でのお茶席用の菓子を創作することも。心得がある息子さんならではの仕事。
慶弔時に欠かせない、一生餅やお赤飯、饅頭も注文可能。
【泉 風月】
住所:泉区和泉中央北3丁目1−11
アクセス:相鉄いずみ野線いずみ中央駅から徒歩10分
営業時間:10:00~18:00
定休日:木曜日、月末の水曜日と木曜日
電話番号:045-805-4775
HP:なし