「ベーカリー&カフェはなむら」が生み出す素敵な風
風はいろんなものを運んできます。春になれば花粉、夏や秋になれば台風となり雨を、冬に向けて木枯らしが寒波を運んできます。時には風からの贈り物が届くことも。時折、立場駅を降りると素敵なパンの香りを運んできてくれます。その香りに誘われて歩いてみると見えてくるのは、「ベーカリー&カフェはなむら」です。
スタッフに聞いたおすすめパン
毎日50種類ほど並ぶ「ベーカリー&カフェはなむら」のパン。自家栽培の「ぼくらの小麦」を使用しています。
私はパン屋さんへ行くと決まって同じものばかり頼んでしまうので、今回は販売スタッフの鈴木智明さんと守谷和香子さんのお二人におすすめをお聞きしました。
鈴木さんのおすすめはレーズンブレッド。ラムレーズンをたっぷり使ったパンで、鈴木さんも思い出すだけで満面の笑みになるほど美味しいパンです。鈴木さんは、以前はパン部門でパン製造に関わり、現在は販売部門でベーカリー&カフェはなむらに勤めて15年ですが、一番楽しい瞬間は小さいお子さんと接する時だそうです。
守谷さんのおすすめはチョコげんこつだそうで、食パン生地にチョコチップが30gほど入っており、レンジで温めて少しチョコをとろけさせて食べるとより美味しくなるのだとか。丁寧でわかりやすい説明に、食欲が増してしまいました。
多くの人に愛されるはなむらの商品
ベーカリー&カフェはなむらを運営する社会福祉法人開く会の副理事長であり、共働舎施設長の萩原達也さんとはなむら販売担当の井上瑞穂さんにお話を聞きました。こちらのベーカリー&カフェはなむらがオープンしたのは今から33年前の1990年11月。障がいのある方が働く福祉現場では、古くは企業の下請けを行うのが一般的でしたが、共働舎は一から手作りで事業をやりたいということでベーカリー&カフェはなむらを立ち上げ、お花や陶器、パンを自分たちで作り販売するようになりました。20年ほど前から区役所や高校、スーパーなどでもパンを販売していて、地域の多くの人に親しまれています。
障害者への理解ではなく、個人への理解を
萩原さんは、「30年ほど前の常識は、障害者の方を社会に合わせようとするものだった」と言います。ノーマライゼーション(障害のある人もない人も、互いに支えあい、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指すこと)やリハビリテーション(本来あるべき人権を回復すること)といった理念が掲げられていましたが、実際の場では障害者は訓練を重ね、足りないところが改善されてから社会に出てもらおうという動きがまだまだ根強くありました。しかしそれだと50歳、60歳になってもまだ足りないところがあると指摘され、そのまま訓練を重ねていたら社会に出られずに人生が終わってしまう。ノーマライゼーションの理念を実現しようと、開く会のみなさんは共働舎を立ち上げ、ここで働くこと自体が社会に貢献できるように、生きる喜びになるようにと考え、今日まで活動されてきました。
続けて障害者の方の自立支援についてのポリシーもお聞きしました。萩原さんは、「自立」とは、たくさんの依存先があることだと捉え、障害はあっても社会の中で他者と接点をもって暮らすことのできる社会環境を構築していきたいといいます。そのために我々に求められることは障害者への理解ではなく、その人個人への理解。我々にはみんな名前があり、周りの人から呼ばれ成長していくもの。障害者の方はどうしてもその機会が少なく、その結果自立から遠ざかってしまうのだとおっしゃっていました。
今回お話を聞いて、萩原さんや井上さんのように自分の目の前の人を理解することが、皆が生きやすくなる秘訣なのではないかと思いました。
みなさんの笑顔あふれる対応や真心こめて作られたパンや陶器、お花は、素敵なものばかりです。ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
##ライタークレジット:
写真・文=斉藤龍太
##Information:
ベーカリー&カフェ はなむら
〒245-0015 横浜市泉区中田西 1-11-1 1階
電話: 045-802-9966
FAX: 045-804-4122
http://www.hirakukaicp.or.jp/shop/
※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。
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