ロゴ画像:いずみ くらし

「ひとりで辛さを抱え込まないで」不登校のこどもを支援する団体“かけはし”

2021年5月、泉区に、不登校のこどもを支援する新しい取り組みが誕生しました。2020年度末まで教員だった廣瀬貴樹さん・千尋さん夫婦が立ちあげた一般社団法人「かけはし」です。廣瀬さんは、不登校の小・中学生が自分らしくすごせる居場所を目指して、地域のケアプラザやコミュニティハウスでこどもたちと向き合っています。

 

一般に、こどもや親は、この先の学校生活に多かれ少なかれ不安を持っているものではないでしょうか。泉区にかけはしが誕生したことで、その不安を軽くできるかもしれません。

 

旧いちょう小学校コミュニティハウスでの活動。1人のこどもに、廣瀬さんやボランティアさんが関わります

 

 

教員から一転、一般社団法人を立ち上げる

 

廣瀬さん夫婦に教員になった理由を聞くと、「こどもが好きだからです」と二人はにこやかな表情を浮かべました。

 

教員時代の千尋さんは児童支援専任教諭として、教室へ入れないこどもたちに2年間寄り添ったことがあります。こどもたちと共に過ごす中で、こどもは興味関心のあることに没頭すると、驚くほど輝きだすことを目の当たりにしたそうです。「のびのびと活動できる場所や時間があったらいいと思っていました」と千尋さんは当時を振り返ります。

 

一方、貴樹さんは、教員として多忙な中でもこどもたちの声を聴き、支えてきました。しかし、生きづらさを抱えているこどもたちが、その子らしく安心できる場所は、学校の外にも必要だと考えるようになりました。数年にわたる葛藤の末、貴樹さんは自身でこどもの居場所を作ることを決意します。その決断を聞いた千尋さんは、貴樹さんに共感しました。

 

夫婦で名づけた法人名「かけはし」は「こどもたちの今を、未来へつなぐ」「新しい人との出会いをつなぐ」「新しい自分につながる」「社会とつながる」など様々な願いが込められています。

 

(左から)廣瀬貴樹さん(こどもたちの間では、愛称もじゃくん)、廣瀬千尋さん(愛称ちーさん)

 

 

設立から半年、こどもたちの変化

 

不登校児の支援は、こどものペースに合わせ、とことん寄り添うことを目的としています。平日午前中からお昼過ぎまでの活動で、何をしても自由ですが、こども自身が時間割を作ることだけは決められています。私が見学した時には、こどもたちはボランティアさんとカードゲームをしたり、校庭や体育館でバドミントンをしたり、のびのびと過ごしていました。

 

「活動を始めたばかりのころは『もじゃくん(貴樹さんの愛称)が決めてよー』と、自分で時間割を決めることに慣れていない子もいたんですよ。小さな決断の積み重ねが、大人になった時の決断に生かされるといいな」(貴樹さん)

 

「活動初期は何かをしたいという思いを出せなかったこどもたちが、友達やスタッフ・ボランティアとの関わりを通じて、やりたいことを表現してくれるようになりました。安心感が生まれ、場の雰囲気が温かくなりました」(千尋さん)と、廣瀬さん夫婦は目を細めて語ってくれました。

 

かけはしでは農園を借りているため、こどもたちは種まきや収穫、畑の整備を体験することもできます。貴樹さんは農家顔負けの地下足袋姿で、ボランティアさんと一緒に土を耕していました。こどもたちの中には虫を捕まえたり、土や石で遊んで過ごしたりする子も。この日は、大根の種がこどもの手によって蒔かれました。

 

体育館でのバドミントン。楽しみにしていた小学生がマイラケットを持ち込み、いいショットが出ていました

 

大根の種まきの様子。無農薬・無化学肥料栽培で野菜を育てています。夏はなす、オクラ、ピーマンなどが収穫できました

 

 

広がり続ける人と人のつながり

 

「今後の課題はなんですか」と尋ねると、貴樹さんは「課題は常にあり、一言では答えられませんが……最初の難関であった法人を設立し、こどもたちを受け入れ、ここまで来られたのはたくさんの方に恵まれたからです。感謝の思いが強いです」と話します。夫婦二人で始めたかけはしのつながりは、この半年間でボランティア、スタッフ、協賛企業、場所を貸してくださる方・施設、保護者、こどもたちと大きく広がり続けています。

 

現在は協賛企業からの出資や会費、寄付金で運営していますが、ゆくゆくは補助金の活用や、自治体から運営を委託される公設民営方式となることを目指しているそうです。

 

8月からは下和泉地区の空き家をリノベーションし、コミュニティカフェを経営する計画も動きだしています。空き家はかけはしの活動をきっかけに、知り合いから提供を受けたそうです。リノベーションには建設機械を扱う地元企業さんが応援にかけつけ、貴樹さんと千尋さんの中学生の元教え子も興味を示し、休日に活動しています。作業中の空き家には、かけはしに来ているこどもたちも手伝いに訪れているそうです。

 

「新しいチャレンジをする度に新しい出会いがあり、原動力をいただいています」と貴樹さん。泉区に子育て支援の輪が広がっています。

 

コミュニティカフェを経営予定の空き家のお庭。あっという間に庭木の刈り込みが終了し、すっきりとした庭に変身しました。空き家の中では壁の取り外しも行われました

 

 

##ライタークレジット:
写真・文=松本 裕美枝(泉区ローカルライター)
写真=蒲 喜美子(泉区ローカルライター)

 

Information:
一般社団法人 かけはし
http://kakehashi.link

 

代表者(廣瀬貴樹さん/ひろせたかき)連絡先:090-2252-1080
ご相談ページ:http://kakehashi.link/soudan
メールアドレス:info@kakehashi.link

 

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

 

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