ロゴ画像:いずみ くらし

絵本も絵本以外も楽しめる、多世代の居場所「みんなの絵本のおうち」

相鉄いずみ野線いずみ中央駅徒歩1分の「みんなの絵本のおうち」(以下「おうち」)は、多世代がくつろげる心地よい空間です。たくさんの絵本や多様なプログラムがあり、赤ちゃんから高齢の方まで、みんなの居場所になっています。代表の森川美代子さん、副代表の松本智美さんにお話を伺ってきました。

 

(左から)「みんなの絵本のおうち」代表の森川美代子さん、副代表の松本智美さん。たくさんの絵本が、虹のように色別で並んでいます。児童書もあります

 

 

0歳から100歳以上まで、みんながいつでも集える場所

 

「おうち」が開所したのは、2020年7月。母体は、活動歴15年超の読み聞かせグループ「おはなしの風」です。以前の拠点は泉区の違う場所でしたが、利便性を高めるため、引っ越しました。

 

今の立地は、相鉄いずみ野線いずみ中央駅から徒歩1分。段差がなく、ほとんど雨にもぬれない道のりです。森川さんは、「ベビーカーでも足腰に不安があっても、安全に集まれる場所にしたかった」とほほ笑みます。泉区役所からも徒歩3分ほどなので、区役所の用事のついででも便利です。

 

「おうち」にはその名の通り、約2,000冊の絵本が、背表紙の色別でずらりと揃っています。お子さんも初めて来た人も、みんなが片付けやすいように、試行錯誤した並べ方です。片付けやすいから、安心して散らかせる、たくさん読める。そんなストレスフリーな、みんなのための仕組みです。

 

ピンクの柱は相鉄線の高架。電車が上を走っているなんて、「子鉄(鉄道が大好きな子ども)」さんが喜びそう。コロナ対策の、空気清浄機・食事テーブルのアクリル板・二酸化炭素測定器なども揃っています。三方が窓で、換気もばっちりです

 

絵本は、お子さんと一緒に読むこともできますし、一人お茶しながら読むという楽しみ方も。子どもはもちろん、大人にも絵本の力を活かしてほしい、という願いからです。大人向けの絵本関連プログラムとして、「大人のためのストーリータイム」「ブッククラブ」などもあります。

 

多様なプログラムの中には、読み聞かせの時間もあります。読み聞かせをしてもらった・した経験をお持ちの方は多いと思いますが、こちらの読み聞かせは一味違います。それは、音楽をかけながら絵本を読む「コンサートリーディング」の形であること。音楽と一緒に英語の絵本を読む手法を、日本語の絵本にも応用しました。英語の先生だったお二人の経験からです。

 

絵本と音楽、二つの力が合わさることで、相乗効果が生まれます。お子さんたちが、その特別な世界に楽しそうに入りこんでいました。いずみ中央駅前で開催される「青空コンサートリーディング」では、通りかかった大人の皆さんも、足を止めて聞き入っているのが印象的でした。子どもはもちろん大人も絵本を楽しめる、そんな空間が生まれていました。

 

「青空コンサートリーディング」。春と秋のお楽しみです、開催日時はホームページをご覧ください。場所は、相鉄いずみ中央駅すぐの、まるい芝生。高架下の建物の手前部分が「おうち」です(写真提供=みんなの絵本のおうち)

 

 

絵本の「心に寄り添い癒す力」を、大人にも伝えたい

 

絵本の楽しさだけでなく、「心に寄り添い癒す力」も、森川さんたちは伝えたいと言います。例えば、育児中。突然熱を出す、片付けたそばから散らかす、やっと寝かしつけても置くと起きる……。子どもは本当にかわいいけれど、毎日大変ですよね。そんなパパ・ママの「心のケアのためにも、絵本が活かされるように」読み聞かせをしていると言います。それは、育児中の大変だった気持ちを絵本に癒された、森川さんご自身の体験に基づいています。

 

コンサートリーディングを聞いていると、「心のストッパーが外れて、ダイレクトに(絵本からのメッセージが聞く人の心に)入ってくる瞬間がある」と森川さんは言います。それは、「いつでも起きるわけではないけれど、素直に、私、よく頑張っていると感じる」特別な瞬間です。「浄化、リラックスの時間」と松本さんは微笑みます。

 

「おうち」に遊びに来る方たちからも、そんな絵本の効果を「もっと早くから知っていたらよかった」という感想をきくそうです。音楽の効果に加えて、誰かに読んでもらうことでも、絵本の力は強まります。「手のマッサージも人にしてもらうと気持ちよさが違うでしょう。それと同じね」と森川さん。納得です。

 

「おうち」の目の前は、地蔵原の水辺。「おうち」で過ごす前後に、外遊びも楽しめます。和泉川沿いの散歩道に繋がっているので、お散歩もおすすめ。緑豊かな泉区ならではです。これは冬景色ですが、「春は桜がきれい」と松本さん

 

 

支えられる側も多世代、支える側も多世代

 

「おうち」の絵本の読み手の中には、80代の方もいらっしゃいます。絵本や音楽の力に加えて「読んでくださる方の人生経験も乗ってくる」(松本さん)ので、さらに豊かな時間になります。

 

そう、支えられる側だけでなく、支える側も「年齢を問わず」になっているのが、「おうち」ならではです。「おうち」の提供プログラムは、既に挙げたもの以外にも、スマホ教室や太極拳など幅広いですが、サービスの受け手を多世代にするだけではありません。担い手も多世代になっているのが、「みんなの居場所」のもう一つの意味になっているわけです。

 

もし手の痛みなど何か不調があっても、「その方のできる範囲で手伝っていただけたら」と森川さんは考えています。だっこを代わってもらうのでなく、その場にいて見守っていてもらうことでも、パパ・ママは助かります。そんな温かな目が「おうち」にあるから、赤ちゃんが泣いても、安心して一息つけるのです。

 

支える側の年代は、上だけでなく下の年代にも広がっています。ボランティアさんには、子育て中のママや高校生、親子で手伝ってくださる方もいるそうです。プログラムの一つ「ホップステップジャンプ」では、お隣の保育園から園児を招いて、小学生が読み聞かせをすることもあります。いろんな向きの矢印が行き来して、多世代の交流が、ここには生まれているのです。

 

小学生向けのプログラム「ホップステップジャンプ」。絵本を通して、自分の表現をできるようになっていきます。講座の最後には、保育園のお子さんへの読み聞かせをします(写真提供=みんなの絵本のおうち)

 

支えるのも支えられるのもみんなで、という思いが、それに共鳴する地域の多世代の思いと重なり合って、「みんなの絵本のおうち」を作っています。今はコロナで制約もありますが、将来は、子ども食堂・寺子屋・仕事帰りの親が子どもと一息つける場・大人が語らう夜カフェ……、構想は広がっています。そして、こういう活動を続けることで、泉区がもっと暮らしやすい街になれば、と願っているそうです。きっと実現する、と感じました。

 

最後に泉区についてお聞きしたところ、「のどか、ゆったりしている、おいしい食べ物がたくさん、川沿いの散歩道、桜、富士山がきれいに見える」など、次々と好きなところを挙げてくださったお二人。この地域と、住む人みんなへの温かな思いをお聞きした、素敵な時間でした。「また来てね」と言ってくださった笑顔に、ここは私の居場所にもなった、と感じました。

 

 

##ライタークレジット:
写真・文=中島知子(泉区ローカルライター)

 

##Information:
みんなの絵本のおうち
メール:picturebookshouse@gmail.com
住所:横浜市泉区和泉中央南5-4-11
電話:045-295-2104
営業時間:月・火・金・土・日 10:00~16:00 (定休日:水・木)
http://minna-ehon-ouchi.sakura.ne.jp/
https://www.facebook.com/picturebookshouse/
※スケジュール、予約、料金は、ホームページやSNSでご確認ください。

※プログラムもカフェも予約優先ですが、空いていれば当日入れることもあるので、お問い合わせください。

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

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