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地域の本好きの身近な存在でありたい 横浜市立義務教育学校緑園学園市民図書室

2022年7月、横浜市立義務教育学校緑園学園の開校に伴いリニューアルオープンした「緑園学園市民図書室」。私の母校にも市民図書室があり、小中学生のころは特に読書が好きだったので、よく足を運んでいました。今回、世話人(市民図書室の運営ボランティア)代表の宮坂裕子さん、副代表の恵木典子さん、広報担当の生熊洋子さんに、市民図書室の魅力や課題についてお話を伺いました。また利用者の方にもおすすめポイントを伺うことができました。

 

西門からすぐの地域交流室の中にある市民図書室

 

 

本好きな世話人が、緑園学園市民図書室をご紹介

 

横浜市では、地域の人たちが主体となって運営している身近なスポーツ・レクリエーション・文化活動の場として 学校を利用できる学校開放事業があります。泉区でも、「より精神的にも、距離的にも近いところでさまざまな年代の人に、気軽に本を楽しんでほしい」という思いで、この学校開放事業の中で活動している文化施設があります。

 

相鉄いずみ野線「緑園都市」駅から徒歩約10分の緑園学園市民図書室は、毎週土曜と日曜に開室(月に2回程度閉館日あり)。蔵書は、最近話題の本から絵本、紙芝居、コミックなど一般、児童向けの本まで、さまざまな年代の方が本を楽しめるように7,500冊程用意しています。

 

世話人は、本が好きな方が多く、図書館司書の資格をもった方が中心となって年に2、3回選書会を実施して購入する本を選定しています。今どんな本が注目されているか、特に本屋大賞や直木賞の受賞     作をチェックしているとのこと。横浜市からの予算を有効活用するために、書店だけではなく古書店でも状態のいいものを見つけて購入するそうです。

 

また、図書館の本には必ずある装備(ラベルや分類番号を貼り、表紙が外れないようにすること)も世話人が1冊ずつ作業。図書館運営に必要な作業を一つひとつ丁寧に、「本が好き」という気持ちを大切にしながら行っています。

 

来館者の入退室時には必ず挨拶をしていて、居心地のいい場所作りを徹底されている印象を受けました。

 

本好きな世話人の選んだ、年に2、3回購入する新着図書

 

 

世話人が感じる市民図書室の魅力「気軽に気楽に」

 

世話人の宮坂さん、恵木さんに市民図書室の魅力についてお伺いすると、まず挙がったのが「気軽に人気の本と出会える可能性が高い」ことです。横浜市の図書館では、本の貸出予約サービスを行っており、市内の図書館全18館から取り寄せた本を読むことができます。しかし、人気の本や注目度が高い本は100人以上の順番待ちも普通。

 

実際に世話人の方が借りようとした新刊本を横浜市図書館蔵書検索ページで検索したところ、予約数が300人を超えていたそうです。すぐに読みたい、ぜひ読みたいという利用者の気持ちに添った選書をしていくことで、日々の生活の中でふらっと来室した際に気になっていた本と出会ってもらえたら、とお話しされていました。

 

二つ目の魅力は、地域の人が「歩いていける」こと。恵木さんはご自身も子育ての中で、「小さな子どもを連れて、電車に乗って市の図書館に本を借りにいくことは少しハードルが高かったので、近くに市民図書室があって助かった」そうです。話題の絵本や紙芝居も用意しており、大人でも楽しめる本が多いので、ぜひ来ていただきたいとお話しされていました。

 

「本が好きな方ならどんな年代の方でも大歓迎」と宮坂さん。リニューアルに伴い、旧緑園東小学校で運営していたころより広くなってより探しやすくなったので、本当に気軽に来室して読書を楽しんでいただきたいとのことでした。

 

(左から)代表の宮坂さん、副代表の恵木さん

 

 

利用者から見た市民図書室の魅力は?

 

5人の利用者の方にもお話を伺うことができました。皆さん日々の生活の中で、毎週または2週間に一度市民図書室を訪れ、借りていく本を探すそうです。

 

インタビューさせていただいた方は、年代もさまざま。2歳のお子さんを子育て中のご夫妻は「最近話題になっているヨシタケシンスケさんの絵本を、ここなら気軽に借りることができてうれしい」と仰っていました。世話人の方が日々の市民図書室運営の中で感じている魅力を利用者の方も同じように感じていることに、心が温かくなりました。また、コミックの蔵書も充実していて、お子さんが小学生のころ『ガラスの仮面』を毎週通って全巻読んだというお話もあり、以前の場所から通じて、長く愛されている場所であると感じました。

 

市民図書室をどのように知ったかお聞きしてみると、「回覧板で知り近いから行ってみたところ、良い本との出会いが多く、市民図書室に通うことが習慣になっていきました」と答えてくれた方も。心の距離の近さを感じることができました。

 

お子さんが手にとりやすいような、親子で一緒に読めるような絵本も紙芝居も多くあります

 

 

コロナと地域の担い手不足の現状

 

お話を伺っていく中で、世話人の方が地域の本好きの方のために丁寧に運営し、実際に地域の利用者の方にとっても良い本との出会いがある場所であることを知ることができました。

 

現状の課題を伺ったところ、「横浜市は人口に対しての図書費の予算が多くはありません。限られた予算の中で利用者の方の蔵書リクエスト希望も聞いてはいますが、なかなか応えられないことが多い」とのこと。

 

また、広報担当の生熊さんには、「コロナ前は、小学校の広い教室でボランティアグループを呼び、絵本の読み聞かせや折り紙教室を実施したり、市民図書室では子ども向けのスタンプラリー(6回来館すればプレゼントがもらえる企画)を開催したり、多くのイベントを行っていました。時勢柄開催が難しくなってしまい、引っ越しもあったので今後の実施は未定です」と教えていただきました。楽しみ方の選択肢が少なくなっている印象を受けました。

 

世話人の高齢化が進んでいることも課題です。緑園学園市民図書室では18人の世話人が活動していて、3カ月に1回程度の本の貸出対応や、月に1度の定例会の参加、会計書記・広報・図書(選書会をメインで運営)などの係活動、新着の本に対しての装備の作業等を行っています。「近隣に住む子育て世代の方に参加してもらい、学校との関わりをもってもらえるとうれしい」と期待していますが、共働きの家庭が増え、なかなか難しい現状があるようです。

 

宮坂さんも恵木さんも、本が好きで世話人のボランティアを始め、良い本との出会いが増えたそう。本好きな方にとっては、なかなか良い環境で気軽にボランティアを始めて続けていくことができているとお話されていました。

 

今後も地域の本好きが気軽・気楽に集まれる場所が続いていくように、この記事が新たな居場所との出会いのきっかけになると良いなと思いました。さまざまな課題がありながらも、丁寧に運営していく姿を見て、本や利用者に対して真摯に向き合っているからこそ、素敵な場所ができているように感じました。

 

横浜市立義務教育学校 緑園学園市民図書室世話人の皆さん「世話人随時募集中」とのこと

 

 

##ライタークレジット:

文=岡田春菜(泉区ローカルライター)

写真=斎藤龍太(泉区ローカルライター)

 

 

##Information

横浜市立義務教育学校 緑園学園市民図書室

住所     : 横浜市泉区緑園5−28(西門からすぐ、地域交流室で開館)

アクセス  :相鉄いずみ野線 緑園都市駅 徒歩11分

バス停 フェリス女学院 徒歩5分

 

開室時間

土曜日 14:00~16:00

日曜日 10:00~12:00

※原則第二日曜日とその前日の土曜日、年末年始・年度末に、閉室日あり。

※本は一人2冊、2週間まで借りることができます。

※スリッパをご持参ください。

 

 

世話人(市民図書室運営ボランティア)随時募集中

ご興味のある方は、世話人にお声掛けください。

 

https://ryokuenlib.jimdofree.com/

 

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

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