ロゴ画像:いずみ くらし

泉区内でアウトドア!自然館泉ベリーキャンプ場で里山キャンプを楽しもう

ゆめが丘周辺は大規模開発が進んでいますが、ゆめが丘駅からわずか徒歩5分のところに、自分だけのスペースでゆったりと自然を満喫できるキャンプ場があります。昔ながらの里山風景が残る「自然館泉ベリーキャンプ場」は、近郊の穴場のキャンプ場としてYouTubeでも話題になっており、県外からもキャンパーが訪れています。農とアウトドアが融合したユニークな「自然館ベリーキャンプ場」を始めた美濃口俊雄さんを訪ねてみました。

 

自然館泉ベリーキャンプ場の管理人・美濃口俊雄さん

 

 

里山暮らしの趣が残る自然館泉

 

自然館泉ベリーキャンプ場の管理運営を行っている美濃口俊雄さんは、先代からこの土地を受け継いできた農家さんです。農地に隣接した雑木林に足を踏み入れると、木々は空を覆うほど高く生い茂り、落ち葉の積もった小径を歩く自分の足音がどこか別の方向から聞こえてくるような、奥深い森の中に迷い込んだような錯覚に陥ります。先代の時代には、各家に「くず小屋」と呼ばれる納屋があり、近隣の人たちと共に手入れをしている雑木林から集めてきたものを保管していました。美濃口さんは、「子どもの頃は、五右衛門風呂に井戸水を汲み入れ、山から集めた薪でお湯を沸かすのが子どもたちの仕事だった」と懐かしそうに話をしてくれました。年長の子どもたちから食べられるきのこを教えてもらったり、小川で釣りをしたりと、里山が生活の一部であったのはそれほど遠い昔のことではなかったことが窺えます。

 

美濃口さんはまた、直売所のパイオニアでもあり、地産地消という言葉が一般に広まり始めた頃、「自然館」という名で野菜の直売所を始めました。今でこそ農作物の直売所は珍しくありませんが、1990年に直売所を始めた当初は、「JAをはじめ色々な人が視察に来たり、新鮮な野菜を買い求めにやってきた」(美濃口さん)そうです。数年後には、直売所だけでなく、畑にインディアンティピーに似たテントを立て、種まき祭や収穫祭、音楽ライブや園芸ギャラリーなど、さまざまなイベントを開催し始めました。自然の中で人が暮らし、集う場所としての自然館は、まさに里山生活を現代風にアレンジしたところだったと言えるでしょう。現在、「自然館泉」の直売所では、新鮮な農作物に加えて、自家製のお惣菜、お漬物も販売されています。さらに、イチゴ狩りやサツマイモの収穫体験、来年からはブルーベリー狩りも始まります。

 

ベリーキャンプ場入り口

 

そんな自然館泉で興味深いのは、3年前にオープンした畑の後ろに広がる森のキャンプサイトです。地域内にある約7ヘクタールの土地の一部で、5年前から美濃口さん自ら森に果樹を植えたり、小道や水場の整備を行ったりしてきました。畑の新鮮野菜や収穫体験で穫った作物を味わいながら、森の中にテントを張って里山の自然をゆったりと満喫できるという画期的な試みです。

 

 

畑と林の間に点在するキャンプサイト

 

べリーキャンプ場のキャンプサイトへは、車道に面した直売所横から細い農道を上がっていきます。道の両サイドには畑が広がっており、振り向くと、晴れた日には富士山を望むことができます。舗装された農道から先は、高い木々が生い茂る森へと小道が続き、森の入口には小さな祠に氏神様が祀られています。この森のすぐ裏では大規模開発が進行しており、大型商業施設が建設中であるにもかかわらず、森には多くの鳥がさえずり、幹の直径が50cmに及ぶほどの大木や、ゲンジボタルも生息するという昔ながらの里山空間が広がっています。

 

この農道を上がっていくとキャンプサイトに到着

 

キャンプ地周辺の畑の様子

 

取材時にはパパイヤも収穫時でした

 

森の入り口にある氏神様の祠

 

畑にティピーを立てて仲間と楽しんでいた美濃口さん。本業は農業でありながらキャンプ場を始めた理由は、「昔からそういうことが好きだった」から。些細な言葉の中にも、里山で遊んでいた頃の楽しさやその土地への深い愛情が感じられ、豊かな自然を将来に残していきたいという心情が込められているように思いました。

 

キャンプサイトは全部で50ほど。森の少し手前にあるブルーベリーの若木が植わる「星空ブルーベリーサイト」、キウイフルーツや柿、みかんなどの果樹が植わっている「フルーツサイト」、昼でも少し暗い木々に囲まれた「森の中サイト」や季節になるとホタルが舞う「ほたるサイト」など、目的や人数に合わせて、ソロからオートまで、さまざまなキャンプスタイルを楽しむことができます。キャンプのプログラムは、昼間の「ランチキャンプ」、午後から夕方にかけての「ディナーキャンプ」、テント泊の「一泊モーニングキャンプ」があります。サツマイモなどの収穫体験、直売所で仕入れた新鮮野菜の焚き火バーベキュー、夜には広い畑での星座観察や森でのカブトムシ探しなどを組み合わせることができ、楽しみ方もいろいろです。

 

各区画に示されているキャンプサイト

 

雑木林の中には「ひまわりサイト」、「ほたるサイト」、「森の中サイト」、「フリーサイト」の4種類

 

6月ごろにはゲンジボタルが舞うというほたるサイト

 

 

環境への愛情が未来をつくる、自然と向き合う学びの場

 

キャンプ場といえば、近年ではグランピングのように豪華で便利なものもありますが、自然館泉ベリーキャンプ場は、完備された施設でのアウトドアというよりは、人と自然が調和していた頃の昔ながらの山遊びを体験できるところです。

 

里山では、モノやエネルギーは地域内で生産・調達され、使い終わったものは、多種多様な生物を通して、自然のなかで新たに再生されていく循環型メカニズムができていました。ベリーキャンプ場では井戸水で洗い物をし、排水はそのまま地面に吸収されていきます。トイレは微生物を利用した簡易トイレです。自然が処理してくれる以上の過剰な排出を行わないことや、自然に戻らないゴミを出さないこと、使用する洗剤の種類に配慮することなどは自然を持続的に利用する上では不可欠です。

 

キャンプ場の水場では井戸水が使えます。飲むことも可能ですが、浄水処理が行われていないので、気になる人は管理人さん宅の水道水も利用できます

 

狐や狸が姿を消した里山では、その生態系も変わり、外来種であるガビチョウやタイワンリスが棲み着くようになりました。特別外来生物に指定されているタイワンリスは、農作物を荒らす害獣とされていますが、美濃口さん曰く、「余剰の果物を食べてくれる森の可愛い住人」です。人間の都合で害獣とされた生き物も、変わりゆく生態系のなかで大事な役割を果たしていることも少なくありません。ちなみに、泉区にはタイワンリスの天敵であるアオダイショウもおり、ベリーキャンプ場では「森の外猫」たちも日々見回りを勤めています。自然館泉では、目に見えない微生物から外来種や外猫たちまで、すべての生き物と共存していくという優しさが感じられます。

 

森の外猫からのお願い

 

大量生産・大量廃棄の社会構造に限界が見えてきた今こそ、注目したい循環型メカニズム。持続可能な社会を取り戻すヒントが、残された身近な自然の中に見出すことができるのではないでしょうか。地産地消は農作物だけでなく、遊びや観光も!知っていそうで知らない地元の魅力を探しにでかけませんか。

 

受付係の森の外猫

 

 

ライタークレジット:

写真・文=笠島克恵(泉区ローカルライター)

 

 

##information

自然館泉ベリーキャンプ場

住所:泉区下飯田町1761

電話:080-6710-3297

https://www.shizenkanizumi.jp/

 

 

※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。

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