ロゴ画像:いずみ くらし

みんなが大好きなコーヒーを通じて地域との関わりを紡ぐ いずみ中央「和輪工房」

福祉事業所(以下「作業所」という。)で作られているコーヒーの商品があるのはご存じですか? 私は、立場駅前で出店している作業所の販売コーナーでドリップバッグのコーヒーを購入し、帰ってから早速飲んだのですが、バランスのよい味で幸福感に包まれました。このコーヒーは和輪工房さんが製造者です。早速、施設長の宮地俊太郎さんから和輪工房の設立背景や事業内容、そして今後の展望についてお伺いできたので、詳しくご紹介します。

 

和輪工房で販売している商品:手前の三日月マークのブレンドと猫ちゃんマークのシングルオリジンのショコラ(ブラジル産)(写真提供:蒲喜美子)

 

和輪工房 施設長 宮地俊太郎さん 和輪工房入り口にて

 

 

温かい雰囲気の工房と店舗

 

和輪工房は、相鉄いずみ中央駅からほど近く、坂を上がった住宅街の中にある白い2階建ての建物です。入口には黒板に手書きで書かれた看板があり、どんなところなのか覗いてみたくなる雰囲気を醸し出しています。中に入るとすぐ右手に主力商品のコーヒーを陳列した棚。左手には作業場があり、作業の様子を見ることができます。ここでは作業所で働いている方を利用者さんと呼んでいます。

 

販売しているコーヒーは2種類でブレンドとショコラです。コーヒー豆の粉砕の作業の時は工房いっぱいに挽き立てのコーヒーの芳醇な香りが漂い、どんなコーヒーなのか手に取ってみたくなります。もう一つの主力商品のお米販売は、昨今の米の逼迫で現在は制限しているとのことで、取材したこの日も販売はしていませんでした。

 

白い2階建てが目印の和輪工房

 

手書きの看板と商品棚。訪れた人をほっとした気持ちにしてくれます

 

 

コーヒー事業の始まりとその魅力

 

施設長である宮地俊太郎さんは、和輪工房の立ち上げから活動に携わっています。和輪工房はグループホーム輪の家を運営している「NPO法人いずみの輪」の事業の一つである通所事業所で、障害のある方々が自立し、地域社会と共に歩める場として2019年2月に開所しました。

 

コーヒー事業を始めたきっかけは、神奈川県でも取り組んでいる作業所が2、3カ所しかなく、非常にめずらしかったため、特徴を出せると考えたこと。利用者さんの中にはコーヒーをこよなく愛する方がいて、これも後押しした理由とのことでした。また、コーヒー豆は保存が効き、作業のロスも少ないこともメリットだそうです。利用者さんたちは好きなコーヒーに関わり、それを自分たちで商品にし、販売することで、作業の楽しさと達成感を得ているとのこと。時々、仕事終わりに至極の「お疲れコーヒー」を楽しむこともあるそうです。私もコーヒーは大好きなので、仕事が終わったときの一杯はさぞおいしいだろうなと思いました。

 

コーヒーを粉砕中の福間さん 芳醇な香りが漂います

 

コーヒー豆を真剣に選別しています(手前)、米袋へシールの貼付作業(奥)

 

 

利用者の声と和輪工房の成長

 

取材を通じて、和輪工房の利用者さんとお話をする機会がありました。関さんは4番目に古株の利用者さんで、和輪工房の成長を一緒に支えてきた一人です。アイデアマンで企画などにも積極的に参加し、意見を出します。岩澤さんは、和輪工房での活動を大事に思っていて、自ら編んだ作品をお店に並べることもあるそうです。

 

宮地さんは温かいまなざしでお二人に色々話題をふって、私との会話を促してくださいましたし、一生懸命伝えることをじっくり聞いていて、その姿に深い信頼関係を垣間見ることができました。宮地さんに私が感じたことを率直に伝えたところ、「利用者さんは鋭いことや前向きな意見も言ってくれるとても頼もしい仲間なんですよ」と笑顔でお答えいただきました。この言葉や皆さんとの会話から、和輪工房のみなさんがお互い尊重しあって、共に成長していこうとする真剣な思いが感じられ、感動を覚えました。

 

関さん(左)から出たアイデアを真剣に検討している宮地さん(右)真剣に話し合っている姿が印象的でした

 

和輪工房を盛り上げたい気持ちでいっぱいの岩澤さん。笑顔でいろいろお話していただきました

 

一番古株の佐藤さんは、若くて元気に作業をしています。見慣れない私にもはっきりした声で話しかけてくれるので、活発な会話を私は楽しむことができました。佐藤さんは開所当初に何気なくホワイトボードに三日月を書いて、その絵がスタッフの間で評判となり、和輪工房のコーヒーのパッケージに採用されたとのことです。後にも先にもあれほどの傑作は生まれていないそうですよ。和輪工房の「和輪」と三日月が何かつながるような不思議なシンクロを感じるエピソードです。

 

コーヒーの焙煎機をバックに笑顔で写真に収まってくれた佐藤さん。三日月マークの作者です

 

地域とのつながりの先にある今後の展望

 

和輪工房は開所してすぐにコロナ禍で自粛状態になりました。利用者さんの中には遠くから通って来る人もいるので、その間スタッフの方がご自宅まで様子を見に行ったり、オンラインなどでお話したりなんとかつながりを維持したそうです。イベント自粛を余儀なくされたので、落ち着いてきた今年は、念願の「いずみの輪 秋まつり」を開催できたのはとてもうれしいことだと宮地さん。お祭りには地域の方もたくさん訪れて盛況でしたが、なにより訪れた方からコーヒーの感想を聞くことで利用者さんやスタッフのやりがいにつながり、開かれた作業所でありたいと改めて感じたとのことでした。

 

宮地さんは、「地域の方々にこの作業所を知ってもらい、立ち寄る機会を生むことで、時には気軽に利用者さんとお話したりサポートに協力していただいたりできるような、そんな持続可能な運営を目指していきたい」とも考えています。近々ドリップコーヒーとお湯を用意し、立ち寄った方が購入したコーヒーをその場で楽しめるイートインスペースの設置なども検討中。ますます地域交流を盛んにする企画を実現していきたいということでした。

 

寒くなるとコーヒーも恋しくなりますので、ぜひ和輪工房を訪れて、皆さんとの会話も楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

11月に行われた秋祭りの様子。たくさんの人と触れ合いました(写真提供:松本裕美枝)

 

コロナが開けて楽しんだお祭りや旅行をポスターにして振り返ろうという準備をしていました。このポスターも利用者さんのアイデアが詰まっているとのことでした

 

 

##ライタークレジット:

写真・文=小松文美(泉区ローカルライター)

 

##Information

通所事業所 和輪工房(就労継続支援B型・生活介護)

〒245-0023

神奈川県横浜市泉区和泉中央南5丁目2-22-1

電話番号・FAX 045-410-6228

営業時間:9:00〜17:00

月曜日から金曜日(祝日は休日)

HP:http://npoizuminowa.wp.xdomain.jp

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