フラワーアークが心を込めて育てる 彩の花苗とフレッシュないちじく
フラワーアークは、2022年4月に社会福祉法人開く会(泉区中田西)の園芸部門から独立し、花苗といちじくを栽培・販売している事業所で、知的障がいのある方と職員が年間約10万鉢の花苗を栽培しています。私が初めてフラワーアークを訪れたのは、いずみくらしのあやめ日報の取材でした。ぎっしりと並んでいる色彩豊かな花苗に圧倒され、また、みなさんの丁寧な仕事ぶりと場の心地よさに、ついつい長居をしてしまいました。
春と秋は一面が花の絨毯に
「花がピークを迎える秋にぜひお越しください」との所長の中江博章さんのおすすめで、フラワーアークを2度目に訪れたのは2024年11月25日。横浜市営地下鉄立場駅から横浜泉郵便局方面に歩いて10分、右手に赤い屋根で青い外装の建物が見えてきます。到着するとパンジーやビオラが一面に咲いていて、色とりどりの糸が編み込まれた絨毯のよう。春にはペチュニア、マリーゴールド、ネメシア、サルビアなどの季節の花々が辺り一面を覆います。
写真に写っているたくさんの花苗の半分以上は既に販売先が決まっている花苗で、公園や小学校、地域ケアプラザなどの施設を彩る予定です。その他にもイベントに出店したり、花苗を植えたプランターをリースしたりと、さまざまな取り組みをしています。「花苗は利用者さんの手によって丁寧に育てられています。市場に出回る花にも負けない良い苗だとお褒めいただいております」と話してくれたのは、開く会副理事長で、同会が運営する共働舎の施設長の萩原さん。フラワーアークでは月に3回ほど外部の講師が花苗の状態を見て直接指導し、スタッフ向けに栽培の勉強会を開催しています。私が購入したビオラは、やっぱり育ちがいいのか、寒さに負けることなく2カ月経っても花を咲かせています。

プランターのリースは月2,750円(税込み)。毎月新しいプランターが届き、その2週間後にはフラワーアークがメンテナンスもしてくれるという手厚さです。プランターリースは好評で鶴見区のお客様もいらっしゃると、ある利用者さんが教えてくれました(2025年2月3日撮影)
ぜひ試してみたい採れたてのいちじく
フラワーアークでは、いちじくの栽培にも取り組んでいます。道路沿いにのぼり旗を出し、7月半ば頃から9月後半までフラワーアークの事務所前で朝採れいちじくのみを販売しています。皮が柔らかく出荷には不向きなので、季節になってもスーパーではあまりお見かけしない品種のいちじく。私も夏になったらぜひ味わってみたいです。
フラワーアークで栽培しているいちじくは皮ごと食べられます。7月の採れはじめのころはフレッシュでそこはかとない甘さがあり、8月中旬頃にはねっとりとした濃厚な味わいに変化していきます。そのまま食べても充分おいしいですが、フレッシュな時期はくし形に切ってからし酢味噌につけたり、輪切りにして生ハムやクリームチーズと一緒に盛り付けたりと、酒の肴として味わうのがおすすめ。濃厚でねっとりとした時期は、ジャムに加工したり、サイコロ状にカットしたりしてパンケーキやヨーグルトに添えるのにもぴったりだそうです。一日約300個収穫できるいちじくは、リピーターの方が多くほとんど売れ残りがないとのこと。フラワーアークで働く利用者さんが収穫し、事務所前で販売をしています。
共に補い合いながら花苗を育てて 地域から頼られる存在になりたい
フラワーアークは「社会福祉法人 開く会」の中の一事業所で、共働舎で30年以上取り組んできた花苗事業を2022年4月に独立させました。いずみくらしでは同法人の「ベーカリー&カフェはなむら」「ファールニエンテ」も紹介しています。
私が訪れた時は、花の切り戻しをする方、花の水やりをする方、プランターやポットを洗っている方がいました。フラワーアークでは障がいの個人差やその方の希望なども考慮して仕事を割り振っています。今日の仕事の中では、水やりは難易度が高め。根の張りを損なわないような水圧にし、ちょうどいい量の水を与える調整力が必要だそうです。
萩原さんは、花苗の栽培は仕事として絶妙な良さがあると言います。「植物は育っていく過程や結果が見えやすいんです。また、大切に育てて枯れてしまっても、動物よりはショックが少なく穏やかな気持ちで世話ができます。花苗を通して利用者さん同士やスタッフとの人間関係が育まれています」

ハウスの中でポットを洗う様子。TV番組やお笑いタレントの話題で盛り上がりながらも、みなさんは作業の手を休めることはありませんでした。偶然私も同じTV番組を見ていたので、話が盛り上がり、共通の話題をいくつも見つけました
中江さんは、フラワーアークで共に働く仲間に対し、「いつも変わらずあるがままの私を受け止めてくれる態度やおおらかさを彼らから感じている」と言います。「障がいのある方に手を差し伸べるだけではなく、働くことで社会の中で役割を果たしている喜びや責任感を一緒に味わっていきたい」と中江さん。鉢数を管理し、質の良い花苗を育てることで取引先や地域の方々の期待に応え信頼を得られれば、利用者のみなさんの社会における活躍の場が、さらに広がると考えています。
##ライタークレジット:
写真・文=松本 裕美枝(泉区ローカルライター)
写真=あやめ日報
##Information:
社会福祉法人 開く会 障害福祉サービス事業所 フラワーアーク
住所:神奈川県横浜市泉区中田町2752-1
交通:横浜市営地下鉄ブルーライン立場駅から徒歩10分
連絡先:045-435-9270
ホームページ:https://www.hirakukaicp.or.jp/flowerark/
※このコーナーの記事は、泉区が大好きな「泉区ローカルライター」が、区民の目線で取材し、執筆しています。
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